未治療TP53変異陽性急性骨髄性白血病に対するMagrolimab併用療法の有効性を検証した第III相試験:ENHANCE-2

TP53変異陽性AMLに対するMagrolimab併用療法の有効性を検証したENHANCE-2試験サマリー Recent Papers

Zeidner JF, Sallman DA, Récher C, et al. Magrolimab plus azacitidine vs physician’s choice for untreated TP53-mutated acute myeloid leukemia: the ENHANCE-2 study. Blood. 2025;146(5):590-600. doi:10.1182/blood.2024027408

Why this paper matters

予後が極めて不良なTP53変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対し、抗CD47抗体magrolimabの併用療法は第Ib相試験において有望な治療成績を示したが、本第III相試験ではその有効性を再現できなかった。現在の標準治療であるアザシチジン+ベネトクラクス(Ven/Aza)療法と比較しても生存期間の改善を示せなかったという事実は、本疾患集団における新規治療開発の困難さを強く再認識させるものである。

Study overview

TP53_変異陽性AMLは既存の治療法に対する抵抗性が極めて強く、強力化学療法やVen/Aza療法後の全生存期間(OS)中央値は約6カ月と極めて短い。
CD47を阻害しマクロファージによる貪食を促進するmagrolimabは、先行試験で良好な奏効率と生存期間を示したことから、本国際共同ランダム化第III相試験(ENHANCE-2)においてその有効性が検証された。

対象は未治療のTP53変異陽性AML患者257例とし、強力化学療法不適応例をMagro/Aza群またはVen/Aza群に、強力化学療法適応例をMagro/Aza群または強力化学療法(7+3療法)群に1:1でランダム化した。
主要評価項目は、集中治療不適応群におけるOSに設定され、層別ログランク検定およびCox比例ハザードモデルを用いた統計解析が行われた。

Key findings

中間解析においてMagro/Aza群の有効性が期待できないと判断され、試験は無効中止となった。
最終解析における主要評価項目のOS中央値は、強力化学療法不適応群においてMagro/Aza群で4.4カ月、対照のVen/Aza群で6.6カ月であり、有意差を認めなかった(ハザード比 1.132、95%信頼区間 0.783-1.637、P=0.5070)。
完全寛解率は強力化学療法不適応群で7.9%対30.8%、適応群で14.8%対28.0%と、いずれの層でもMagro/Aza群が数値的に低い結果であった。
安全性については、グレード3以上の有害事象がMagro/Aza群で96.9%、Ven/Aza群で95.9%と両群で同等であり、主な発現事象は感染症(50.0%対53.1%)や熱性好中球減少症(47.9%対49.0%)であった。Magrolimabに特徴的な貧血は、初回投与後のヘモグロビン低下中央値が1.8 g/dLであったが、プライミング投与戦略により管理可能であった。

Clinical perspective

本研究は、極めて予後不良なTP53変異陽性AMLという特定の分子病態に注目し、世界で初めて第III相ランダム化比較試験を行なったものである。
先行する第Ib相試験の結果が本試験で再現されなかった要因として、Magro/Aza群での早期死亡や病勢進行による投与期間の短縮、および対照群であるVen/Aza療法の奏効発現の速やかさが寄与した可能性が考察されている。
本結果では、TP53変異陽性AMLに対するMagro/Aza療法のベネフィットは乏しく、Ven/Aza療法を上回る新たな治療選択肢の確立という目的は残念ながら達成できなかった。本試験の結果は、今後の開発において第Ib相試験の有望な結果を慎重に解釈する必要性を示しており、現在は他の併用療法に関する試験が進められている。