未治療慢性リンパ性白血病に対する期間固定療法とイブルチニブ継続療法の直接比較:第3相CLL17試験中間解析

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Al-Sawaf O, Stumpf J, Zhang C, et al. Fixed-Duration versus Continuous Treatment for Chronic Lymphocytic Leukemia. N Engl J Med. Published online December 6, 2025. doi:10.1056/NEJMoa2515458

Why this paper matters

これまで慢性リンパ性白血病(CLL)の分子標的治療において、継続投与と期間固定投与のどちらが優れているか、直接比較した第3相試験のデータは存在しなかった。
本研究は、期間固定療法(ベネトクラクス+オビヌツズマブまたはベネトクラクス+イブルチニブ)が、標準的な継続療法であるイブルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)において非劣性であることを初めて証明し、未治療CLLにおける期間限定療法の妥当性を強化したものである。

Study overview

CLL治療は化学免疫療法から分子標的治療へと大きく舵を切ったが、当初導入されたBTK阻害薬やBCL2阻害薬は、病勢進行まで継続する投与法が一般的であった。
併用療法による深い寛解と微小残存病変(MRD)陰性化の達成に基づき、治療休止期間を設ける期間固定療法の概念が導入されたものの、継続療法と比較した有効性の非劣性は不明であった。
本研究は13カ国174施設で実施された国際共同非盲検ランダム化第3相試験であり、未治療の成人CLL患者909例を対象とした。
患者は、期間固定のベネトクラクス+オビヌツズマブ群(Ven-Obi群)、期間固定のベネトクラクス+イブルチニブ群(Ven-Ibr群)、継続的なイブルチニブ単剤群(Ibr群)に1:1:1の割合で割り付けられた。
主要評価項目は治験責任医師判定によるPFSとし、ハザード比1.608(3年PFSで8%の差に相当)を非劣性マージンとして設定した。
統計解析にはLan–DeMetsアルファ消費関数を用いた中間解析が組み込まれ、遺伝学的リスクや全身状態による層別化が行われた。

Key findings

正中観察期間34.2カ月の時点において、3年無増悪生存率はVen-Obi群で81.1%、Ven-Ibr群で79.4%、Ibr群で81.0%であった。
Ibr群に対するハザード比はVen-Obi群で0.87、Ven-Ibr群で0.84であり、いずれの期間固定療法もイブルチニブ継続療法に対してPFSの非劣性を示した。
治療終了時の末梢血MRD陰性化(10⁻⁴未満)率は、Ven-Obi群で73.3%、Ven-Ibr群で47.2%であったのに対し、Ibr群では0%であった(P<0.0001)。
完全奏効率もVen-Obi群(51.5%)およびVen-Ibr群(46.2%)がIbr群(8.3%)を大きく上回った。3年全生存率はそれぞれ91.5%、96.0%、95.7%であった。
del(17p) または TP53 変異では3年PFSはVen-Obi群で62.0%、Ven-Ibr群で69.0%であったのに対し、Ibr継続群では79.4%であった。
複雑核型(Complex Karyotype)では3年PFSはVen-Obi群で62.2%であったが、Ven-Ibr群(82.3%)やIbr継続群(80.1%)は良好な数値を維持していた。
安全性に関しては、Ven-Obi群で重篤な有害事象の発現率が64.1%と高く、特にCOVID-19を含む感染症死が他群より多く認められた。

Clinical perspective

本研究の新規性は、未治療CLLにおいて期間固定療法が継続療法に対して有効性で劣らないことを第3相試験で直接的に示した点にある。
しかし、イブルチニブはその毒性プロファイルから、現在では「優先されるレジメン(Preferred)」からは外れ、「特定の状況で有用(Useful in certain circumstances)」な選択肢へと位置づけが変更されており、継続療法の代表格として適切であるかどうかは議論の残るところある。イブルチニブ群はMRD陰性率が0%であるにもかかわらず、3年PFS(無増悪生存率)は81.0%と良好であり、期間限定療法群(Ven-Obi群:81.1%、Ven-Ibr群:79.4%)と同等であることは特筆すべき部分であるが、やはり長期的予後に差がないのであれば経済面など期間限定療法のメリットは大きい。
一方で、Ven-Obi群におけるCOVID-19パンデミック下での感染症リスクの高さは、臨床導入における免疫不全状態への配慮の重要性を再認識させた。
本解析は中間結果であり、高リスク群の割合は全体の8%未満と小さいため、現時点では統計的な断定はできないが、観察期間が延びるにつれて、**「治療を継続している群」と「すでに治療を終えている群」の間で、PFSの曲線(Curve)がさらに離れていく(乖離する)可能性があり、さらなる観察期間の延長が必要である。
今後は次世代BTK阻害薬を用いた期間固定療法の検証として、MAJIC試験などの結果が待たれる。