Kreimer AR, Porras C, Liu D, et al. Noninferiority of One HPV Vaccine Dose to Two Doses. N Engl J Med. 2025;393(24):2421-2433. doi:10.1056/NEJMoa2506765
Why this paper matters
HPVワクチンの世界的普及が課題となる中、本研究は1回接種が標準的な2回接種に対し、主要な発がん性型であるHPV16/18の持続感染予防において非劣性であることを大規模ランダム化比較試験で証明した。
これにより、ワクチンの供給制限やコストが障壁となっている地域を含め、世界的な子宮頸がん予防戦略の効率化を裏付ける強力な臨床的根拠が提示された。
Study overview
子宮頸がんの77%はHPV16型および18型の持続感染に起因し、ワクチンはそのほとんどを防ぐことができる。一方で、世界保健機構が接種推奨を出してから20年以上経過するが未だにワクチンへのアクセスは十分ではなく、世界規模では思春期女性のたった27%しかワクチン接種がされていない。ワクチンへのアクセス制限のある国で子宮頸がんとそれに関連する死亡の90%が集中している。
Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)では、HPVワクチンを11-12歳の定期接種として推奨しており、9-14歳の思春期前後においてはワクチンに対する抗体反応が成人より強いという特徴があり2回の接種を推奨、15-26歳での接種もしくはHIV感染者含む免疫不全者では3回接種が推奨されている。27~45歳の成人に対しては既にHPVに暴露されている割合が高いことや、ワクチンによる追加的ベネフィットが限定的という理由から、個別の臨床判断(shared clinical decision-making)が推奨されている。
過去の非ランダム化試験や限定的な臨床試験において1回接種の有効性が示唆されており、WHOは2022年12月に発行したポジションペーパー(WHO position paper)において、この1回接種を推奨した。標準的な2回接種に対する非劣性を確定的に検証するため、コスタリカにおいて二重盲検ランダム化比較試験(ESCUDDO試験)が実施された。
対象はHPVワクチン未接種で健康な12〜16歳の女性20,330例であり、2価ワクチン(Cervarix, GlaxoSmithKline Biologicals)または9価ワクチン(Gardasil 9, Merck Sharp and Dohme)の1回(0カ月目に1回目の接種を行い、6カ月目に盲検化維持のため対照ワクチン(Tdap)を接種)または2回接種(0カ月目および6カ月目に、同一のHPVワクチンを接種)を行う4群に1:1:1:1の割合で割り付けられた。
主要評価項目は、接種後12カ月から60カ月までの間に発生し、少なくとも6カ月以上持続する新規のHPV16または18感染とし、非劣性マージンは100人あたり1.25感染と設定された。
感染の診断および持続については46種のHPV型を検出可能な標的シークエンシングアッセイ(TypeSeq2)を使用する。15歳以上の参加者は6カ月ごと、15歳未満は15歳になるまで毎年、その後は6カ月ごとに実施し5年間追跡する。
また、統計的手法として、プロペンシティスコア調整を用いて非ランダム化調査に参加した未接種者3,005例と比較し、ワクチンの有効性も評価された。
Key findings
5年間の追跡の結果、2価および9価ワクチンのいずれにおいても、1回接種は2回接種に対して主要評価項目であるHPV16/18の持続感染予防における非劣性を示した。
2価ワクチンの1回接種群と2回接種群の率差は100人あたり−0.13感染(95%信頼区間[CI], −0.45〜0.15)、9価ワクチンでは0.21感染(95%CI, −0.09〜0.51)であり、いずれも非劣性のP値は0.001未満であった。未接種群と比較したHPV16/18感染に対するワクチン有効性は、全4群で97%以上であった。
9価ワクチンの副次評価項目である7種のがん惹起性HPV型(16, 18, 31, 33, 45, 52, 58型)に対する解析でも1回接種の非劣性が確認され、有効性は94.5%であった。
安全性に関しては、ワクチンに関連すると判断された重篤な有害事象は全参加者の0.03%(7/20,330例)と極めて稀であり、特定の安全性パターンは認められなかった。
Clinical perspective
本研究の新規性は、2価および9価ワクチンの1回接種が、標準的な2回接種と遜色ない高い保護効果を5年間にわたり維持することを、大規模な二重盲検ランダム化比較試験で初めて明確に立証した点にある。
この結果は、世界保健機関(WHO)による1回接種スケジュールの代替推奨を強力に支持するものであり、限られたリソース下での子宮頸がん予防の最適化に寄与する。
5年間の追跡期間では十分な防御能が確認されたが、1回接種による免疫応答のより長期的な持続性についてはさらなるモニタリングが必要であるという制限がある。
今後の展望としては、1回接種後の長期的な有効性と抗体価の安定性を評価するため、本試験の参加者を対象としたさらなる継続的な追跡研究が予定されている。


