未治療CLLにおけるピルトブルチニブの有効性と安全性:化学免疫療法に対する圧倒的優越性と優れた心血管安全性を証明した第III相BRUIN CLL-313試験

未治療CLLにおけるピルトブルチニブと化学免疫療法を比較した第III相BRUIN CLL-313試験のサマリー Recent Papers

Jurczak W, Kwiatek M, Czyz J, et al. BRUIN CLL-313: Randomized Phase III Trial of Pirtobrutinib Versus Bendamustine Plus Rituximab in Untreated Patients With Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma. J Clin Oncol. Published online December 9, 2025. doi:10.1200/JCO-25-02380

Why this paper matters

本研究は、未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)において、非共有結合型(nc)BTK阻害薬ピルトブルチニブが、従来の標準的化学免疫療法(CIT)に対し、無増悪生存期間(PFS)の圧倒的な優越性を示した初の第III相試験である。
イブルチニブの推奨順位が下がる中、ピルトブルチニブが既存の次世代共有結合型(c)BTK阻害薬を数値的に上回る治療効果と極めて低い心血管毒性を示し、初治療の新たな選択肢となることが期待される。

Study overview

昨今のCLLの初治療では治療効果・副作用の点からcBTK阻害薬やBCL2阻害薬を含むレジメンが優先され、ベンダムスチン+リツキシマブ(BendaR)などのCITはこれら新規薬剤が使用不可または不適切な場合に限定される。ピルトブルチニブは高選択性の非共有結合型(nc)BTK阻害剤であり、共有結合型(cBTKi)のような不可逆結合をせずとも低 ナノモル(nM;10⁻⁹ mol/L)レベルという極めて低い濃度で、生物学的に意味のある阻害効果を発揮する薬理学的特性を有する。CLL/SLLの第I/II相BRUIN試験において、ピルトブルチニブ再発/難治性CLL/SLL患者(cBTKi既治療患者を含む)で有望な安全性と有効性を示し米国食品医薬品局(FDA)により、cBTKiおよびBCL2阻害剤を含む少なくとも2ライン以上の前治療歴を有する患者に対する適応拡大承認が得られた。さらに、 無作為化第III相BRUIN CLL-321試験では、特にcBTKi治療歴のあるCLL/SLL患者において、ピルトブルチニブ単剤療法が治験責任医師(INV)選択のイデラリシブ+リツキシマブまたはベンダムスチン+リツキシマブ(BendaR)療法への優越性が検証され、その後世界各国で承認された。NCCNガイドラインパネルは、cBTKiベースの治療レジメンに対する耐性または不耐性が生じた患者に対し、2次治療以降としてピルトブルチニブを推奨している。
既治療例で有効性が示されていたncBTK阻害薬ピルトブルチニブの、未治療例における有用性を検証すべく、del(17p)を有しない未治療のCLL/SLL患者282名を対象に、ピルトブルチニブ単剤継続投与(200mg/日)とBendaR療法(6サイクル)を1:1で比較した非盲検無作為化第III相試験が実施された。
主要評価項目は独立判定委員会(IRC)評価によるPFSであり、統計解析には層別ログランクテストおよびCox比例ハザードモデルが用いられた。

Key findings

主要評価項目において、ピルトブルチニブ群はBendaR群に対しPFSを劇的に改善し、進行または死亡のリスクを80.1%減少させた(HR, 0.199; 95% CI, 0.107-0.367; P < .0001)
24カ月PFSはピルトブルチニブ群で93.4%に達し、IGHV変異の有無にかかわらず一貫した利益が認められている。
安全性に関しては、グレード3以上の有害事象がピルトブルチニブ群で40.0%に対しBendaR群では67.4%と高く、特にBTK阻害薬で懸念される心房細動・心房粗動の発生率は、ピルトブルチニブ群で1.4%と極めて低頻度であった。
中間解析における全生存期間(OS)もピルトブルチニブ群で良好な傾向にある(HR, 0.257)。

Clinical perspective

最新のNCCNガイドラインでは、イブルチニブはその毒性プロファイルに基づき推奨から外れ、アカラブルチニブやザヌブルチニブが第一選択となっている。
本研究の新規性は、ピルトブルチニブがBendaRとの比較において、過去の試験でイブルチニブ(Alliance A041202試験)(HR 0.39 vs BendaR)やザヌブルチニブ(SEQUOIA試験)(HR 0.42 vs BendaR)が示した数値を上回るPFS(HR 0.199)を認めた点にある。
比較対象は異なるが、アカラブルチニブもELEVATE-TN試験(対クロラムブシル+オビヌツズマブ)で良好な治療効果(HR 0.20 [単剤] vs Clb+Obi)を示しているが、ピルトブルチニブはこれら次世代cBTK阻害薬よりも心房細動のリスク(1.4% vs アカラブルチニブ 9%、ザヌブルチニブ 3%)をさらに抑えられる可能性を提示した。
制限事項としてdel(17p)症例の除外が挙げられるが、現在はイブルチニブとの直接比較試験(BRUIN-CLL 314)などが進行中である。