HLA一致血縁者間末梢血幹細胞移植における移植後シクロホスファミドとシクロスポリン併用療法の有用性:第III相CAST試験

HLA一致血縁者間末梢血幹細胞移植におけるPTCy+シクロスポリンのGVHD予防試験 Recent Papers

Curtis DJ, Patil SS, Reynolds J, et al. Graft-versus-Host Disease Prophylaxis with Cyclophosphamide and Cyclosporin. N Engl J Med. 2025;393(3):243-254. doi:10.1056/NEJMoa2503189

Why this paper matters

血縁一致ドナーからの末梢血幹細胞移植を施行する血液がん患者の移植後管理において、移植片対宿主病(GVHD)予防は生存と生活の質を左右する。
長年、カルシニューリン阻害薬と代謝拮抗薬の併用が標準治療であったが、特に骨髄破壊的治療を含む末梢血幹細胞移植におけるGVHDのリスク低減には限界があった。
血縁一致ドナー、かつ骨髄破壊的治療を含む条件下において、代謝拮抗薬を移植後シクロホスファミド(PTCy)に置き換えることでGVHD抑制効果が高まるのかという問いに対し、本研究は主要評価項目であるGVHD-free, relapse-free survival(GRSF)を改善するというデータを示した。

Study overview

高リスク血液悪性腫瘍において骨髄破壊的前処置後(MAC)の末梢血造血幹細胞を用いた同種造血幹細胞移植は治癒可能性のある治療として確立しているが、GVHD頻度が高いという問題があった。
GVHDの予防としてカルシニューリン阻害薬(cyclosporin or tacrolimus)と代謝拮抗薬(methotrexate or mycophenolate mofetil)の併用がHLA一致血縁ドナーにおける移植で40年近く用いられてきた。
これまで、欧州やオーストラリアではHLA一致ドナーの移植において抗胸腺グロブリンを用いてきた。Krögerらの研究 Changらの研究
しかし、PFS, OSを悪化させる可能性がRCTで示されており米国では施行されてこなかった。Soifferらの第III相二重盲検無作為化比較試験では、非血縁ドナーからの骨髄破壊的前処理を用いた移植を対象としたこの試験では、ATLG投与群で急性および慢性GVHDの有意な減少が認められたものの、2年時点のPFS(47% vs 65%, P=0.04)およびOS(59% vs 74%, P=0.034)が対照群と比較して有意に低下させ、ATGの使用はPFS悪化(HR 1.55)およびOS悪化(HR 1.74)の独立した関連因子であることが確認された。
BMT CTN 1703試験HOVON-96試験では、非血縁者間または強度減弱前処置を用いた移植におけるPTCyの有用性が示されてきた。
しかし、血縁一致ドナー移植、特にMACを併用する症例におけるPTCyの効果はこれまで十分検証されてこなかった。
本研究は、血縁一致ドナーからの末梢血幹細胞移植において、PTCyとシクロスポリンの併用が標準的なシクロスポリンとメトトレキサートの併用よりも優れた臨床成績を示すとの仮説を立てた。
本研究は、第III相前向き非盲検化無作為化比較試験(CAST試験)として実施された。
2019年4月4日から2024年1月30日までに、オーストラリアとニュージーランドの10施設で134名の成人患者が登録された。
対象は第1または第2寛解期の急性白血病、あるいは骨髄芽球20%未満の骨髄異形成症候群であり、HLA 6/6一致の血縁ドナーから末梢血幹細胞移植を受ける患者とした。
患者はPTCy+シクロスポリン群(介入群)またはシクロスポリン+メトトレキサート群(対照群)に1:1で無作為に割り付けられた。
介入群は移植後3、4日目にシクロホスファミド、5日目からシクロスポリンを投与し、対照群は移植前からシクロスポリンを開始し、移植後1、3、6、11日目にメトトレキサートを投与した。
主要評価項目は、移植日からグレードIII以上の急性GVHD、中等症から重症の慢性GVHD、形態学的再発、または全死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間と定義されたGRFSとした。

Key findings

主要評価項目であるGRFSは、対照群の生存期間中央値6.4カ月(95% CI 5.6–8.3)に対し、介入群では26.2カ月(95% CI 9.1–到達せず)であり、HR 0.42(95% CI 0.27–0.66, P<0.001)であった。
3年時点のGRFSは、介入群で49%(95% CI 36–61)、対照群で14%(95% CI 6–25)であった。
副次評価項目において、3カ月時点のグレードIII–IVの急性GVHD累積発現率は介入群で3%(95% CI 1–10)、対照群で10%(95% CI 4–19)であった。
2年時点の全生存率は、介入群83%(95% CI 71–91)、対照群71%(95% CI 57–80)であり、死亡のHRは0.59(95% CI 0.29–1.19)であった。
移植後100日以内の重篤な有害事象の発現率は両群で同程度であり、グレード3以上の有害事象は介入群で20%、対照群で32%に認められた。
好中球生着までの期間中央値は介入群19日、対照群18日、血小板生着までの期間中央値は介入群22日、対照群18日であった。

Clinical perspective

本研究のデータは、血縁一致ドナーを用いた末梢血幹細胞移植、特に骨髄破壊的治療を用いる高リスク血液がん患者に対する一次治療のGVHD予防戦略の有用性を示した。
この結果は、ATGを使用しない、あるいはリソースの限られた施設において、従来のカルシニューリン阻害薬とメトトレキサートの併用に代わる選択肢として、PTCyとシクロスポリンの併用の臨床的妥当性を示した。
本研究の限界として、オープンラベル試験であるためGVHD評価におけるバイアスを否定できない点、および移植後100日以降の感染症や二次発がんなどの遅発性合併症に関する長期データが不足している点が挙げられる。
現在、強度減弱前処置を用いた移植において、ATGとPTCyベースのレジメンを直接比較するMoTD試験が進行中である。