Fischer K, Al-Sawaf O, Bahlo J, et al. Venetoclax and Obinutuzumab in Patients with CLL and Coexisting Conditions. N Engl J Med. 2019;380(23):2225-2236. doi:10.1056/NEJMoa1815281
Why this paper matters
合併症を有する未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、ベネトクラクスとオビヌツズマブの併用による固定期間治療が、従来の標準治療である化学免疫療法よりも優れた無増悪生存期間を示すことを明らかにした。化学療法を用いない有限期間の治療で、高リスクの遺伝子学的特徴を持つ症例を含め、高い微小残存病変(MRD)陰性化率を達成できることを示した点で臨床的意義が大きい。
Study overview
多くのCLL患者は高齢で臨床的に重要な合併症を抱えており、より効果的かつ毒性の低い治療法が求められていた。
本研究は、BCL2阻害薬であるベネトクラクスとCD20抗体オビヌツズマブの併用療法が、標準治療であるクロラムブシルとオビヌツズマブの併用療法に対して優越性を持つかを検証した多施設共同オープンラベル第3相ランダム化比較試験である。
対象は、modified Cumulative Illness Rating Scale(CIRS)スコアが6点超または推定クレアチニンクリアランスが70ml/min未満の未治療CLL患者432名とした。
介入群はベネトクラクス(第1サイクルの22日目から経口投与、5週間かけて段階的に増量(20mg、50mg、100mg、200mgを順に各1週間、次いで400mgを1週間投与))とオビヌツズマブ(1日目(100mg)、2日目(900mg)、8日目(1000mg)、15日目(1000mg)に静脈内投与、計6サイクル)、対照群はクロラムブシル(各サイクルの1日目および15日目に、0.5mg/kgを1日1回経口投与)とオビヌツズマブをそれぞれ12サイクル(各28日間)投与する固定期間治療とした。
主要評価項目は治験責任医師判定による無増悪生存期間(PFS)に設定され、統計解析は層別ログランク試験を用いて行われ、ハザード比0.65を想定したサンプルサイズ設計がなされた。
CIRS: 14の臓器カテゴリー(心臓、高血圧、血管・血液、呼吸器、目・耳・鼻・喉、上部消化管、下部消化管、肝臓、腎臓、その他泌尿生殖器、筋骨格・外皮、神経系、内分泌・代謝、精神・行動)について評価を行う。各カテゴリーに対し、症状の重症度や治療の必要性に応じて 0点(問題なし)から4点(極めて重度、あるいは致死的) までの5段階でスコアを付け、それらを合算して最終的なスコア(最大56点)を算出する。高齢入院患者における 18カ月時点の死亡率や再入院率を予測する有効な指標 であることが確認されている。
Key findings
28.1カ月の追跡期間中央値において、ベネトクラクス・オビヌツズマブ群はクロラムブシル・オビヌツズマブ群と比較してPFSが有意に延長した(ハザード比 0.35、95%信頼区間 0.23-0.53、P<0.001)。
24カ月時点のPFS推定率は、ベネトクラクス・オビヌツズマブ群で88.2%に対し、対照群では64.1%であった。
全集団の13.8%が TP53 欠失、変異、またはその両方、59.8%がIGHV非変異であり、これらの予後不良サブグループで一貫してベネトクラクス・オビヌツズマブ群の優位性が認められた。
治療終了3カ月後の末梢血におけるMRD陰性率は、ベネトクラクス・オビヌツズマブ群で75.5%と、対照群の35.2%に比して有意に高かった。
完全奏効率も介入群で49.5%と、対照群の23.1%を大きく上回った。
安全性に関しては、グレード3または4の好中球減少がベネトクラクス・オビヌツズマブ群で52.8%、感染症が17.5%に認められたが、対照群(それぞれ48.1%、15.0%)と比較して顕著な差はなかった。腫瘍崩壊症候群は介入群で3例報告されたが、予防策の実施により臨床的に重大な事象は回避された。
Clinical perspective
本研究は、合併症のあるCLL患者に対して細胞毒性のある化学療法を用いず、分子標的薬の組み合わせのみで深い分子学的奏効を伴う固定期間治療法を確立し、2025/11/20より本邦でも使用可能となった。
この治療法はイブルチニブなどの継続投与を必要とする治療法と比較して、毒性による治療中断を避けつつ有限の治療期間で深い奏効を目指す新たな選択肢としてあがる。
いわゆる”until PD”治療であるブルトン型チロシンキナーゼベースの治療の有効性がこれまで示されてきたが、本試験の固定期間治療は患者の利便性や毒性管理の面で利点がある。
先日紹介したCLL17試験では、ベネトクラクス+オビヌツズマブ(VenO)およびベネトクラクス+イブルチニブによる12サイクルの固定期間治療が、継続治療の代表格であるイブルチニブ単剤療法に対して無増悪生存期間(PFS)の非劣性を証明した。
しかし、全記事でも指摘したようにイブルチニブはその毒性プロファイルから、現在では「優先されるレジメン(Preferred)」からは外れ、「特定の状況で有用(Useful in certain circumstances)」な選択肢へと位置づけが変更されており、継続療法の代表格として適切であるかどうかは議論の残るところある。
本試験の制限事項として、追跡期間が28カ月と比較的短いため、全生存期間(OS)における有意差は現時点では確認されておらず、奏効の持続性についてはさらなる観察を要する。
今後の展望は、この固定期間治療による奏効がどの程度長期にわたり維持されるかを評価するための長期追跡調査に限定される。



