Johansen ND, Modin D, Loiacono MM, et al. High-Dose Influenza Vaccine Effectiveness against Hospitalization in Older Adults. N Engl J Med. 2025;393(23):2291-2302. doi:10.1056/NEJMoa2509907
Why this paper matters
高用量インフルエンザワクチンの標準用量に対する優越性を、33万人規模の個別ランダム化比較試験で検証した重要な報告である。
主要評価項目であるインフルエンザまたは肺炎による入院抑制では有意差を示せなかったものの、インフルエンザ特異的な入院リスク低減において一貫した傾向が示されており、高齢者における最適なワクチン戦略を検討する上での実証的なデータを提供している。
Study overview
インフルエンザは高齢者において高い死亡率や心血管イベントのリスクを伴うが、標準的なワクチンでは十分な効果が得られないことが課題であった。
抗原量を4倍に増やした高用量不活化インフルエンザワクチンは、先行研究において臨床診断されたインフルエンザに対する優越性を示していたが、入院などの重症アウトカムを評価した大規模な個別ランダム化比較試験のデータは限られていた。
本研究「DANFLU-2」は、2022年から2025年の3シーズンにわたり、デンマークの全国的な行政健康レジストリを活用して実施された、オープンラベルのランダム化比較試験である。
対象は65歳以上の高齢者332,438例であり、高用量ワクチン(各株60μgの血球凝集素含有)群または標準用量ワクチン(同15μg含有)群に1:1の割合で割り付けられた。
主要評価項目は、ワクチン接種14日後から翌年5月31日までの期間における、インフルエンザまたは肺炎による入院である。
統計解析では、標準用量群のイベント発生率を0.74%と想定し、相対的ワクチン有効性(rVE)12.5%を検出するために90%の検出力を確保するよう設計され、中間解析に伴う調整を加えた階層的検定手順が用いられた。
Key findings
主要評価項目であるインフルエンザまたは肺炎による入院は、高用量群で0.68%(1138例)、標準用量群で0.73%(1210例)に発生し、相対的ワクチン有効性は5.9%(95.2% CI, -2.1~13.4; P=0.14)であり、統計的な有意差は認められなかった。
一方で、副次評価項目および探索的評価項目においては、ICD-10コードに基づくインフルエンザによる入院が0.06%対0.11%(rVE 43.6%; 95.2% CI, 27.5~56.3)、臨床検査で確定されたインフルエンザによる入院が0.11%対0.17%(rVE 35.9%; 95.2% CI, 22.2~47.3)と、高用量群で低い傾向を示した。
心肺疾患による入院についても、高用量群2.25%に対し標準用量群2.38%(rVE 5.7%; 95.2% CI, 1.4~9.9)であった。
全死因死亡および重篤な有害事象の発生率は両群間で同様であり、安全性に大きな差はみられなかった。
Clinical perspective
本研究の新規性は、国の行政レジストリを基盤とすることで、これまで観察研究に頼らざるを得なかった重症アウトカムに対する有効性を、33万人という極めて大規模な個別ランダム化試験で評価した点にある。
感染症診療の文脈において、インフルエンザと肺炎を合わせた複合評価項目で有意差が得られなかった背景には、COVID-19パンデミック以降の検査体制やコーディングの変化、あるいは肺炎の起炎微生物の変遷が影響している可能性が指摘されている。
本研究の限界として、オープンラベル設計による受診行動への影響の懸念や、ルーチン診療のデータに基づくコーディングの不正確さが挙げられるが、インフルエンザ特異的な入院や心肺イベントの抑制に関しては一貫した有益性が示唆されている。
今後の展望として、本試験の結果は既にGALFLU試験との統合解析(FLUNITY-HD)に組み込まれており、総計46万人以上のデータを基に、重症アウトカムに対する高用量ワクチンの位置づけがさらに詳細に検討される予定である。


