BCMA CAR-T療法への橋渡しとしてのトアルクエタマブ:GPRC5D標的による順次治療の有効性と安全性検証

Clinical Trial: Talquetamab bridging to BCMA CAR-T therapy Recent Papers

Dhakal B, Akhtar OS, Fandrei D, et al. Sequential targeting in multiple myeloma: talquetamab, a GPRC5D bispecific antibody, as a bridge to BCMA CAR-T therapy. Blood. 2025;146(17):2063-2072. doi:10.1182/blood.2025029773

Why this paper matters

BCMA標的CAR-T療法の製造待機期間中における病勢進行は、治療完遂を阻む重大な臨床的障壁であるが、既存の橋渡し治療の奏効率は限定的である。
本研究は、異なる標的であるGPRC5Dを介したトアルクエタマブが、高い病勢コントロール力を維持しつつ、重症度の高い患者を安全にCAR-T輸注へと導く実効性の高い戦略であることを示している。

Study overview

BCMA CAR-T療法であるide-celやcilta-celは再発・難治性多発性骨髄腫の予後を改善したが、6〜8週間に及ぶ製造期間中の病勢進行により約10〜15%の患者が投与に至らない課題がある。
従来の化学療法による橋渡し治療では奏効率が30%未満と低く、輸注時の腫瘍負荷が毒性を増強させる懸念から、異なる抗原を標的とした強力な導入治療の必要性が仮説として立てられた。
本研究は、米国18施設およびドイツ2施設から成る多施設共同レトロスペクティブ解析であり、BCMA CAR-T輸注を意図してトアルクエタマブを投与された134例を対象とした。
主要評価項目は、トアルクエタマブによる橋渡しの安全性、CAR-Tへの移行率、および有効性である。統計解析にはカプランマイヤー法による無増悪生存期間および全生存期間の算出、ならびにCox比例ハザードモデルを用いた多変量解析が適用された。

Key findings

解析対象となった134例のうち、119例(89%)が正常にCAR-T輸注を完了した。
トアルクエタマブ単独によるブリッジング期間中の奏効率は71%に達し、その効果は髄外病変や高リスク染色体異常の有無にかかわらず一貫していた。
安全性に関しては、トアルクエタマブ投与に伴うグレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)は発生せず、CAR-T輸注後の重篤なCRS(グレード3以上)も1.7%と極めて低率に抑えられた。
CAR-T後の全体奏効率は88%、完全奏効率は54%であり、トアルクエタマブ投与により可溶性BCMAレベルの持続的な低下が確認されるとともに、CAR-T細胞の良好な増殖キネティクスが維持されていた。

Clinical perspective

本研究の新規性は、BCMAとは独立して発現するGPRC5Dを標的としたトアルクエタマブを先行投与することで、抗原逃避を回避しつつ腫瘍負荷を軽減し、後続するCAR-T療法の毒性を管理可能にした点にある。これは、既存の主要試験であるCARTITUDE-1等の適格基準を満たさない実臨床の超高リスク症例においても、高度な治療完遂率を担保できることを示唆している。
研究の限界として、レトロスペクティブな設計に起因するバイアスの可能性と比較的短い追跡期間が挙げられ、特に味覚障害や皮膚毒性といったトアルクエタマブ特有の副作用が長期的なQOLに与える影響については慎重な評価を要する。
今後は、RedirecTT-1のような多標的治療の知見も踏まえ、最適な投与サイクル数や休薬期間を検証する前向きな臨床試験が期待される。