非血縁者間移植における後置シクロホスファミド・シロリムス・シクロスポリン併用療法の慢性GVHD抑制効果:第II相ランダム化比較試験

再発・難治性DLBCLにおけるモスネツズマブ併用療法の第III相試験 Recent Papers

Ueda Oshima M, Vo PT, Boeckh M, et al. Sirolimus and Cyclosporine With Post-Transplant Cyclophosphamide or Mycophenolate Mofetil as Graft-Versus-Host Disease Prophylaxis in Unrelated Donor Hematopoietic Cell Transplantation. J Clin Oncol. 2025;43(33):3600-3609. doi:10.1200/JCO-25-01238

Why this paper matters

非破壊的または強度減弱前処置を用いた非血縁者間造血幹細胞移植において、シロリムス(SIR)とシクロスポリン(CSP)に移植後シクロホスファミド(PTCy)を併用するレジメンが、従来のミコフェノール酸モフェチル(MMF)併用療法と比較して、再発リスク低下を維持しつつ慢性GVHDを劇的に抑制することを示した。臨床的に問題となる中等症から重症の慢性GVHDが極めて低率に抑えられており、移植後の長期的な非再発死亡やQOLの改善に寄与する可能性がある。

Study overview

SIRは、ラパマイシン標的タンパク質阻害剤であり、非骨髄破壊的前処置を用いたHLA適合非血縁同種造血幹細胞移植における多施設無作為化第III相試験 では、SIRを標準的GVHD予防であるCSP+MMFに加えることで急性GVHDを減らし、全生存率・無増悪生存率を改善した。
また、HLA-9/10適合同種造血幹細胞移植において、SIRとCSP/MMFの併用は、従来の治療結果と比較してaGVHDの発生率が低く、生存率が優れていた。
しかし、これらの研究におけるSIRの追加は、慢性広範型GVHDの発生率を改善しなかった。
本研究では、MMFをPTCyに置き換えることで、再発を増やすことなく慢性GVHDを低減できるという仮説を検証している。
対象は骨髄破壊的前処置に不適格な血液悪性腫瘍を有する成人患者145名であり、HLA合致または1座不一致の非血縁者ドナーから末梢血幹細胞移植を施行された。
患者はPTCy(50 mg/kg once daily on days +3, +4)、SIR、CSP(+5日目より、SIR 2mgを1日1回、経口CSP 5mg/kgを12時間毎(または静脈内投与相当量)に開始)を併用する群(PTCy群)と、MMF(経口または静脈内投与によるMMF 15 mg/kgを8時間ごとに1回(1日総量45 mg/kg)を、造血幹細胞移植(HCT)後4~6時間経過した移植日0日目より開始)、シロリムス、シクロスポリンを併用する群(非PTCy群)に1:1で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は移植後1年時点の無慢性GVHD・無再発生存率(CRFS, 中等度から重度のcGVHD、再発、死亡の複合評価項目)であり、統計解析にはカプラン・マイヤー法およびCox回帰分析が用いられた。

Key findings

移植後1年時点のCRFSは、PTCy群で73%であったのに対し、非PTCy群では48%であり、PTCy群において有意に優れていた(HR 0.46, P=0.005)。
この結果は主に慢性GVHDの強力な抑制に起因しており、1年時点の中等症から重症の慢性GVHD発生率はPTCy群で3%であったのに対し、非PTCy群では33%であった(HR 0.07, P=0.0004)。
一方で、1年時点の再発率は両群ともに15%で差を認めず、全生存率も86%と同等であった。
安全性に関しては、PTCy群でグレード3以上の感染症リスクが有意に高く(HR 2.65, P=0.003)、特にBKウイルスの検出率や、好中球および血小板の生着遅延が顕著であった。

Clinical perspective

本研究の新規性は、PTCyにシロリムスとシクロスポリンを組み合わせることで、非血縁者間造血幹細胞移植における慢性GVHDを極めて低率に抑え込む相乗的な効果を示した点にある。
同様にPTCyを用いたプラットフォームを検証したBMT CTN 1703試験と比較しても、本レジメンによる慢性GVHD抑制効果は非常に高い。
ただし、PTCy群における感染症や臓器毒性の頻度の高さが臨床上の課題として残されており、非再発死亡率の数値的な上昇には注意を要する。
今後は、他の免疫抑制剤との組み合わせ、抗胸腺グロブリン製剤との比較検証を目的とした多施設共同試験が予定されている。