Fetsch V, Schwöbel L, Ozyerli-Goknar E, et al. Menin inhibition enhances graft-versus-leukemia effects by T-cell activation and endogenous retrovirus induction in AML. Blood. 2026;147(5):584-601. doi:10.1182/blood.2025029712
Why this paper matters
本研究は、メニン阻害薬が急性骨髄性白血病(AML)細胞に対する直接的な抗腫瘍効果にとどまらず、腫瘍側の免疫原性向上とドナーT細胞の活性化という二重の機序を介してGraft-versus-Leukemia(GVL)効果を著明に増強することを明らかにした。
移植後の再発が予後を規定するKMT2A遺伝子再構成やNPM1変異陽性AMLにおいて、免疫逃避機構を打破し、同種造血細胞移植の治療成績を向上させるための新たな維持療法戦略として極めて重要な臨床的意義を持つ。
Study overview
KMT2A遺伝子再構成やNPM1変異を有するAMLは同種造血細胞移植後も再発頻度が高いことが問題となっている。移植によって導入されたドナー由来の免疫は、本来AML細胞を認識し排除するが(GVL効果)、残存するAML細胞は免疫系から逃れるための様々なメカニズムを獲得し、ドナーT細胞に対して「不可視化(invisible)」されてしまう。
白血病細胞が免疫系から逃れる主要な機序の一つが、細胞表面におけるMHC-II(HLA-DR、-DQ、-DP)の発現消失である。
MHC-IIの発現を制御するマスター転写因子であるCIITA(クラスIIトランス活性化因子)の発現が抑制されることで、MHC-IIの欠損が生じ、ドナーT細胞は白血病細胞を適切に認識できなくなり免疫監視をすり抜けて増殖を許してしまう。このような免疫逃避が治療における課題となっている。
本研究は、メニン阻害がこれらの免疫逃避を反転させ、さらにドナーT細胞の機能を直接強化するという仮説に基づき、in vitroおよび複数のマウスモデルを用いて検証された。
ヒトAML細胞株、患者由来細胞、およびKMT2A-PTDやKMT2A-MLLT3導入骨髄細胞を用いたマウス同種移植モデルでの生存解析を行った。
解析には、ゲノムワイドCRISPRスクリーニング、ATAC-seq、およびT細胞に対するChIP-seqが用いられ、メニン阻害薬(revumenib、MI-463、bleximenib等)の曝露によるMHC-II発現の変化、HERVの活性化、およびT細胞のプロファイル変容が評価された。
Key findings
メニン阻害は、白血病細胞において内因性レトロウイルス(HERV)の転写を誘発し、cGAS-STING経路を介してCIITAおよびMHC-IIの発現を有意に上昇させた。
ドナーT細胞に対しても直接的な作用を持ち、BTLA、PLAC8、CD84といった負の制御因子の発現を抑制することで、TNF-α、IFN-γ、パフォリン、グランザイムA/Bの産生を促進し、細胞傷害活性を強化するとともにT細胞の疲弊を軽減した。
マウスモデルにおいて、メニン阻害薬とドナーT細胞輸注の併用は、それぞれの単独療法と比較して生存期間を著明に延長させた。
白血病細胞がメニン阻害薬耐性変異(MEN1 M327I)を有する場合であっても、阻害薬によるT細胞側の活性化維持を介して生存ベネフィットが得られることが確認された。
Clinical perspective
本研究は、メニン阻害が白血病細胞のHERV/MHC-II軸を介した「免疫的可視化」と、T細胞の負の制御因子の抑制による「エフェクター機能強化」という双方向の免疫修飾作用を持つことを解明した点にある。
これは、既存の抗腫瘍活性に加え、同種移植後の再発予防における強力な免疫学的アプローチとしての位置づけを提示している。
解析では高濃度でのオフターゲット効果への注意が示唆されているが、同種反応性T細胞の存在下で最大の効果を発揮する特性は、移植後の維持療法として極めて合理的である。
現在、同種移植後の再発抑制を目的としたメニン阻害薬の維持療法の有効性を検証する第1相試験(NCT06575296)が進行中であり、実臨床への導入が期待される。


