既治療の再発・難治性多発性骨髄腫に対するテクリスタマブ・ダラツムマブ併用療法の優越性:第3相MajesTEC-3試験

再発・難治性多発性骨髄腫に対するテクリスタマブ・ダラツムマブ併用療法の臨床試験 Recent Papers

Costa LJ, Bahlis NJ, Perrot A, et al. Teclistamab plus Daratumumab in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma. N Engl J Med. 2026;394(8):739-752. doi:10.1056/NEJMoa2514663

Why this paper matters

既治療の再発・難治性多発性骨髄腫において、抗CD38抗体を含む標準治療を大幅に上回る無増悪生存期間および全生存期間の改善が示されたことは臨床的に極めて重要である。BCMA標的二重特異性抗体とダラツムマブの併用により、治療早期のラインから高率な微小残存病変陰性化と長期的な予後向上が期待できる。

Study overview

第I/II相MajesTEC-1試験において、T細胞表面のCD3および骨髄腫細胞・B細胞のB細胞成熟抗原を標的とする二重特異性抗体テクリスタマブは、再発性または難治性多発性骨髄腫の多剤耐性患者において、深い持続的奏効を示した。

抗CD38標的モノクローナル抗体であるダラツムマブは、多発性骨髄腫の標準治療レジメンのベースであり、あらゆる治療ラインにおいて生存率を改善することがわかっている。
腫瘍への直接作用に加え、ダラツムマブは免疫抑制性T細胞を枯渇させ、CD8+ T細胞の細胞傷害性を増強することで免疫微小環境を感作し、テクリスタマブによる骨髄腫細胞の根絶と相乗効果を生み出す
テクリスタマブとダラツムマブのこの既製免疫療法の組み合わせは、再発または難治性の二次治療以降における多発性骨髄腫の治療成績を改善する可能性のある治療戦略である。

本試験では、前治療歴が1〜3ラインで、プロテアソーム阻害薬およびレナリドミドに抵抗性を示すなどの治療後に増悪した多発性骨髄腫患者を対象とした。
テクリスタマブとダラツムマブを併用する群と、治験担当医師が選択した標準治療群(ダラツムマブ、デキサメタゾンに加え、ポマリドミドまたはボルテゾミブを併用)に1:1の割合でランダムに割り付けた。
主要評価項目は独立判定委員会評価による無増悪生存期間(PFS)とし、層別対数ランク検定およびCox比例ハザードモデルを用いた中間解析が実施された。

テクリスタマブの投与スケジュール

  • 第1サイクル(28日間): 2回のステップアップ投与(0.06 mg/kgおよび0.3 mg/kg)を行った後、維持用量として1.5 mg/kgを週1回投与する。
  • 第2サイクル: 1.5 mg/kgを週1回投与する。
  • 第3サイクル〜第6サイクル: 3 mg/kgを2週に1回投与する。
  • 第7サイクル以降: 3 mg/kgを4週に1回投与する。
    ダラツムマブはテクリスタマブの投与スケジュールと同日に実施される。

Key findings

中央値34.5ヶ月の追跡において、テクリスタマブ・ダラツムマブ群は対照群と比較して無増悪生存期間(PFS)を83%改善した(ハザード比 0.17; 95%信頼区間 0.12–0.23; P<0.001)。
36ヶ月PFSは介入群で83.4%、対照群で29.7%であった。
また、完全奏効以上の割合(81.8% vs. 32.1%)および微小残存病変陰性化率(58.4% vs. 17.1%)においても介入群が有意に優れていた。
36ヶ月全生存率も介入群で83.3%に達し、対照群の65.0%に対し有意な改善を認めた。
安全性に関しては、介入群でサイトカイン放出症候群が60.1%に認められたが、全例がGrade 1または2であった。

Clinical perspective

本試験では抗CD38抗体ダラツムマブとBCMA標的二重特異性抗体を組み合わせた「off-the-shelf」の免疫療法が、既存の標準治療であるDPdやDVdを圧倒する治療効果を証明した。
本試験における対照群のPFS中央値18.1ヶ月は、APOLLO試験(https://doi.org/10.1016/s1470-2045(21)00128-5)やCASTOR試験(https://doi.org/10.1016/j.clml.2019.09.623)といった既報を上回る良好な成績であったが、介入群の治療成績はこれらをさらに凌駕している。
ただし、治療初期における感染症リスクが課題であり、特に免疫グロブリン補充療法や感染予防プロトコルの厳格な遵守が臨床導入における必須条件となる。
今後は本併用療法が早期治療ラインにおける主要な選択肢として確立され、長期的な生存曲線のプラトー維持に寄与することが期待される。

トアルクエタマブと抗CD38抗体ダラツムマブの併用療法のフェーズ1b試験(TRIMM-2試験)

再発・難治性多発性骨髄腫に対するトアルクエタマブ+ダラツムマブ併用療法の安全性評価:TRIMM-2試験
再発・難治性多発性骨髄腫に対するGPRC5D標的二重特異性抗体トアルクエタマブとダラツムマブ併用療法の安全性と有効性を評価したTRIMM-2試験の要点を解説する。