Ph陰性急性リンパ性白血病における年齢適応化学療法とMRDに基づく移植戦略:GRAALL-2014試験結果

Ph陰性ALLにおける年齢適応化学療法とMRDに基づく移植戦略に関する臨床試験 Recent Papers

Boissel N, Chevret S, Huguet F, et al. Age-adapted chemotherapy and MRD-oriented transplant for Ph-negative acute lymphoblastic leukemia: the GRAALL-2014 trial. Blood. 2026;147(8):821-833. doi:10.1182/blood.2025029611

Why this paper matters

小児準拠レジメンの強化は成人急性リンパ性白血病(ALL)の予後を改善したが、45歳以上の症例における毒性と、第一寛解期における同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)の最適な適応基準が課題として残されていた。
本研究は、年齢に応じた治療強度の調整と微小残存病変(MRD)に基づく移植の層別化により、非再発死亡を抑えつつ生存成績を向上できることを示している。

Study overview

60歳以下のフィラデルフィア染色体陰性(Ph(-))ALLでは小児型化学療法により著明な予後改善効果が得られたが、年齢に比例した毒性の増加が高齢者への適応において疑問視されている。また、これらの患者における第一寛解期での同種移植について再評価がされつつある。
本グループにおける先行研究であるGRAALL-2003とGRAALL-2005では小児型強力化学療法の高齢者における毒性が明らかになっており、特に45歳を超える患者の早期アスパラギナーゼの使用や寛解後感染症発症による非再発死亡(NRM)の増加が観察されている。
GRAALL-2014 protocolでは、小児型化学療法をステロイド・アスパラギナーゼ・アントラサイクリンの減量を患者の年齢に応じて行なっている。
従来、同種移植は若年成人ALLにおいて地固め療法的な立ち位置をとっていたが、第一寛解期での施行は近年疑問視されている。GRAALL-2005で同種移植は寛解導入および地固め療法終了時の微小残存病変(MRD)の多い患者において利益が得られた。
GRAALL-2014 protocolでは、MRDの多い患者に限定した同種移植を行なっている。
本研究では18-59歳のPh(-)ALL患者におけるGRAALL-2014の結果を報告し、GRAALL-2005と比較する。
18歳-59歳の初発フィラデルフィア染色体陰性(Ph−)ALL患者743例を対象とし、45歳以上の群ではアントラサイクリンやアスパラギナーゼ等の投与量を減量する一方、allo-HSCTの適応を超高リスク群に限定する介入を行った。
主要評価項目は4年無病生存率(DFS)とし、GRAALL-2005試験を対照群として統計学的解析を実施した。

※超高リスク群

  • 遅延完全寛解(Late CR): 1コース目の寛解導入療法で寛解に至らず、救援療法を経て完全寛解に達した症例。
  • 誘導療法後のMRD不良: 寛解導入療法後(Time Point 1、約6週時点)の微小残存病変(MRD)が 10^(−3) 以上。
  • 地固め療法後のMRD不良: 第1地固め療法後(Time Point 2、約12週時点)のMRDが 10^(−4) 以上。

※GRAALL-2005
初発の成人Ph陰性急性リンパ性白血病(ALL)に対し、小児型化学療法へのシクロホスファミド増量(hyper-C)の追加効果を検証し、および本治療の忍容性における年齢限界を特定した。しかし、hyper-Cの追加によるCR率、無イベント生存率(EFS)、OSの有意な改善は認められなかった。特に55歳以上の高齢者では、計画された化学療法の完遂率が低かった。GRAALL-2005試験では、VHRの定義に初診時の白血球数、中枢神経浸潤、特定の遺伝子異常(KMT2A再構成や複雑核型、低二倍体など)といった多くの臨床的・生物学的因子が含まれていたが、GRAALL-2014試験では、これらの初診時因子をVHRの定義(=移植適応基準)から除外し、「早期のMRD反応」および「寛解導入までの期間」のみに基づく戦略へと簡略化された。

Key findings

GRAALL-2014 protocolは45歳以上の群において、GRAALL-2005試験と比較し寛解導入療法中の早期死亡率が11.0%から3.3%へと有意に低下し、全完全寛解率は85.7%から91.6%へと向上した。
MRDに基づく基準によりallo-HSCTの適応症例(超高リスク群)は約50%減少したが、移植施行は超高リスク群のDFS(HR 0.58)およびOS(HR 0.48)を有意に改善させた。
(レスポンダー・バイアスを排除するために、Simon and Makuch法を用いて解析(時間依存性解析))
4年DFSは全体で57.1%とGRAALL-2005対照群と同等であったが、4年生存率(OS)は18-44歳の群(71.7% vs 65.5%, P=0.031)および45-59歳の群(59.5% vs 49.6%, P=0.011)のいずれにおいても有意な改善を認めた。
ただし、45歳以上の群ではGRAALL-2005対照群と比較して再発率の上昇が確認された(4年累積再発率 40.9% vs 29.9%)。

Clinical perspective

本研究では化学療法の強度を年齢に応じて最適化し、MRDに基づいて真に移植を必要とする症例を抽出することで、過剰な治療を避けつつ生存期間を延長できることが示された。
45歳以上の症例における再発リスクの制御が依然として重要な課題であるが、GRAALL-2005と比較して、再発や死亡を含めた指標であるDFSには有意な改善が見られなかった一方で、OSは全年齢層で有意に向上している。これは救援療法の進歩が寄与している可能性があり、毒性の低減と救済療法の進歩、特にB細胞系ALLにおけるブリナツモマブやイノツズマブ・オゾガマイシンなどの免疫療法の活用が関与している可能性がある。
今後は、再発率を抑制しつつさらなる非再発死亡の低減を図るため、免疫療法を早期から統合する戦略の確立が待たれる。