Bagratuni T, Theologi O, Vlachos C, et al. Genomic landscape of IgM-MGUS and patients with stable or progressive asymptomatic Waldenström macroglobulinemia. Blood. 2025;146(25):3086-3097. doi:10.1182/blood.2025030177
Why this paper matters
本研究は、臨床変数のみに依拠していたIgM型前がん病態の管理において、ゲノムデータが進行予測精度を大幅に向上させることを実証したものである。
MYD88変異アレル頻度(VAF)や蓄積する遺伝子異常の数が、症候性疾患への移行を予見する客観的なバイオマーカーとなり得ることを示しており、リスクに基づいた精密な監視戦略の構築に寄与する。
Study overview
ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)はMYD88 L265P変異を特徴とするが、IgM型単クローン性免疫グロブリン血症(IgM-MGUS)や無症候性WM(aWM)から症候化へ至る生物学的背景は未解明であり、従来の臨床指標では個別の進行予測が困難であった。
本研究は、網羅的なゲノム解析が進行リスクを規定する因子を同定するという仮説のもと、139名(計229サンプル)を対象とした全エクソームシーケンシング(WES)を実施した。
研究デザインは、初期コホート76名と検証コホート63名で構成され、9名の進行症例では連続的なサンプル解析も行われた。
主要評価項目は症候性疾患への進行までの期間(TTP)に設定された。
統計手法にはカプランマイヤー法およびCox比例ハザードモデルに加え、42の再発性遺伝子変異と10のコピー数異常(CNA)を臨床データに統合した機械学習手法であるランダムサバイバルフォレスト(RSF)が用いられた。
Key findings
疾患の進化過程に従い腫瘍遺伝子変異量が段階的に増加することが示され、進行型aWM(aWMpr)では安定型(aWMst)と比較してMYD88 L265PのVAFが有意に高かった(中央値 0.38 vs 0.21, P=0.02)。
遺伝子変異とCNAの合計が4つ以上の症例ではTTPが有意に短縮しており、特にCD79B、ARID1A、CREBBPの変異が進行例で頻繁に認められた。
外部検証群における解析では、臨床データのみを用いた予測モデルのC指数が0.52であったのに対し、ゲノム情報を統合したRSFモデルでは0.67まで予測精度が向上した。
多変量解析においても、ゲノム分類は既存の臨床スコア(IPSSWM 2019)から独立した有意な進行予測因子であることが確認された。
Clinical perspective
本研究の新規性は、MYD88 VAFの定量的な高さおよびゲノムイベントの累積数が進行リスクを決定づける強力な指標であることを明らかにした点にある。
血液および免疫不全診療の文脈においては、臨床的に安定しているIgM-MGUS群の中から、既にWM様のゲノム特徴を備えた高リスク群を早期に識別できる可能性を提示しており、適切な監視間隔の策定に寄与する。解析対象となった進行イベント数が少ない点は制限事項であるが、統合的なゲノム評価が臨床指標を補完する有用性は示されている。
今後の展望として、本研究で同定された78の遺伝子変異およびCNAを含む標的パネルを用いた、新規診断例に対するスクリーニングの有用性を検証する研究が進められている。

