未治療多発性骨髄腫に対する強化型VRD療法と自家移植前処置BUMEL vs MEL200の第3相試験:GEM12/14試験の長期解析

未治療多発性骨髄腫におけるGEM12/14試験の長期解析 Recent Papers

Lahuerta JJ, San-Miguel J, Jiménez-Ubieto A, et al. High-dose busulfan-melphalan vs melphalan and reinforced VRD for newly diagnosed multiple myeloma: a phase 3 GEM trial. Blood. 2025;146(15):1747-1758. doi:10.1182/blood.2025028313

Why this paper matters

本研究は、移植適応の未治療多発性骨髄腫において、経静脈的ブスルファン+メルファランを用いた前処置を用いた自家造血幹細胞移植の組み合わせが、3剤併用療法として報告された中で最長の無増悪生存期間(PFS)をもたらすことを示した点で重要である。さらに、国際病期分類(ISS)に基づいて自家移植の前処置を選択することにより、個々の患者の予後を最適化できる可能性を提示している。

Study overview

自家造血幹細胞移植(ASCT)の前処置としてはメルファラン200mg/m2(MEL200)が長年の標準であるが、静注ブスルファンとメルファランの併用(BUMEL)が予後を改善する可能性がレトロスペクティブな研究から示唆されていた(https://doi.org/10.3324/haematol.2010.028027)。一方で、経口ブスルファンによる肝類洞閉塞症候群(venoocclusive disease; VOD)の懸念があり導入の妨げとなっていたが、静注製剤の登場によりその頻度は減少している。
本研究は、強化されたボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン(VRD)による導入・地固め療法において、BUMELとMEL200の有効性を比較することを目的とした第3相非盲検ランダム化比較試験である。
対象は移植適応のある65歳以下の未治療多発性骨髄腫患者458名であり、導入療法として6サイクル、地固め療法として2サイクルの計8サイクルにわたる「強化されたVRD療法」(レナリドミド25mg、デキサメタゾン各サイクル8回投与)を施行後、BUMELまたはMEL200による前処置を伴うASCTを行い、さらに2サイクルの地固め療法と、その後の維持療法(GEM14試験)を継続した。
主要評価項目はPFSであり、統計解析は意図した治療(ITT)集団を対象とし、ISS病期や細胞遺伝学的異常に基づくサブグループ解析も事前に規定された手法で行われた。

Key findings

全集団におけるPFSの中央値は78ヶ月であり、前処置別の比較ではBUMEL群が89.0ヶ月、MEL200群が73.1ヶ月と、統計的な有意差は認められなかった(HR 0.89; P = 0.3)。
一方で、微小残存病変(MRD)の陰性率(感度10^-6)は、BUMEL群が68%であり、MEL200群の58%と比較して有意に高値であった(P = 0.035)。
サブグループ解析においては、ISS病期IIまたはIIIの患者ではBUMEL群が良好なPFS(中央値76ヶ月)を示したのに対し、ISS病期Iの患者ではMEL200群の予後が優れていた。
安全性に関しては、BUMEL群でグレード2から4の粘膜炎(25.3% vs 15.4%)や感染症(27% vs 19%)の頻度が高かったものの、生着までの期間や総生存期間、二次性原発がんの発生率に有意な差はみられなかった。

Clinical perspective

主要評価項目であるPFSでBUMELの優越性が示されなかったが、著者らは強力な3剤併用療法(強化VRD)を導入および地固めに計8サイクル施行した場合、前処置の強度が予後に与える上乗せ効果を相殺したのではないかと考察している。
MRD陰性率においてBUMELが有意に勝りながらもPFSの延長に直結しなかった点は、移植後100日時点でのMRD陰性率はBUMEL群55%に対しMEL200群52%と、この時点では大きな差はなく、ASCT後の地固め・維持療法による治療効果の均一化や、残存したMRD細胞の生物学的な感受性の違いがが両群の差を埋めた可能性があり、前処置単独の優位性を議論する上でのある意味弊害となっている。
ISS病期に基づいた前処置の使い分けの可能性を提示した点は非常に興味深く、ISS I症例には標準的なMEL200を、ISS II/IIIの進行症例にはBUMELを選択するというリスク層別化アプローチが、一律の前処置よりも予後を最適化する可能性を示している。
今後の展望としては、前処理の選択をISSや細胞遺伝学的異常に基づいて個別化するアプローチを検証する、さらなる臨床試験が必要である。