Pardo-Seco J, Rodríguez-Tenreiro-Sánchez C, Giné-Vázquez I, et al. High-Dose Influenza Vaccine to Reduce Hospitalizations. N Engl J Med. 2025;393(23):2303-2312. doi:10.1056/NEJMoa2509834
Why this paper matters
高齢者における高用量インフルエンザワクチンの有効性は、検査確定診断例については示されてきたが、入院リスクの低減といった重症化予防に関するランダム化比較試験のデータは不足していた。
本研究は、地域在住の65〜79歳において高用量ワクチンが標準用量と比較して、インフルエンザまたは肺炎による入院リスクを約24%低減することを示しており、高齢者に対するワクチン選択の臨床的根拠を補強するものである。
Study overview
インフルエンザワクチンは高齢者において有効性が低下することが知られており、抗原量を4倍に増やした高用量ワクチンの有用性が新規感染症予防という観点から検証されてきたが、入院回避に直結するかは十分に検証されていなかった。
本研究は、高用量不活化インフルエンザワクチンが標準用量と比較して重症アウトカムを減少させるという仮説を検証した、レジストリベースのオープンラベル・ランダム化比較試験である。
スペインのガリシア州において2023年から2025年の2シーズンにわたり実施され、地域在住の65〜79歳の成人133,882例を対象として、4価高用量ワクチン(各株60μgのヘマグルチニン抗原)または標準用量ワクチン(各株15μg)を1:1の割合で割り付けた。
主要評価項目は、接種後14日から翌年5月31日までのインフルエンザまたは肺炎による入院の複合アウトカムとした。
統計解析は意図した治療(ITT)集団で行われ、相対的ワクチン有効性は1マイナス相対リスクとして算出されたが、イベント数が事前に規定した統計的検定の閾値に達しなかったため、記述的解析として報告されている。
Key findings
主要評価項目であるインフルエンザまたは肺炎による入院は、高用量群で174/67,093例(0.26%)、標準用量群で227/66,789例(0.34%)に発生し、相対的ワクチン有効性は23.7%(95% CI, 6.6〜37.7)であった。
副次評価項目であるインフルエンザによる入院単独では、高用量群で63例、標準用量群で92例となり、有効性は31.8%(95% CI, 5.0〜51.3)であった。
心肺疾患による入院についても8.4%(95% CI, 0.1〜16.1)のリスク低減が認められた。
安全性については、重篤な有害事象の発生率は両群で同等であり、ワクチンに関連した死亡は認められなかった。
これらの結果は、流行した株の差異にかかわらず2シーズンを通じて一貫していた。
Clinical perspective
本研究の新規性は、地域の保健医療レジストリを活用した実臨床に即した手法により、13万人を超える大規模集団において高用量ワクチンが入院抑制に寄与する可能性を実証した点にある。
感染症診療において、高齢者の重症化リスク軽減を目的としたワクチン選択を行う際の有力な知見となる。
ただし、流行状況の影響で事前に計画された統計的検定に必要なイベント数に達していないことや、オープンラベル試験である点には解釈上の注意が必要である。
今後の展望としては、本試験と手法を統一して実施されたデンマークのDANFLU-2試験との個別患者データ統合解析(FLUNITY-HD)により、主要評価項目を含む各指標についてより強固な統計的裏付けがなされることが予定されている。


