再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブとR2療法の併用:第1b/2相試験における高い完全奏効率と長期予後の検討(EPCORE NHL-2)

エプコリタマブとR2療法の併用を検討した濾胞性リンパ腫の臨床試験 Recent Papers

Falchi L, Sureda A, Leppä S, et al. Fixed-duration epcoritamab plus R2 drives favorable outcomes in relapsed or refractory follicular lymphoma.Blood. 2025;146(22):2629-2640. doi:10.1182/blood.2025029909

Why this paper matters

再発・難治性濾胞性リンパ腫(R/R FL)に対し皮下投与型CD3×CD20二重特異性抗体エプコリタマブとR2療法(レナリドミド+リツキシマブ)を併用することで、極めて高い完全奏効率と持続的な効果が得られることを示した。POD24や二重抵抗性といった既存の治療で予後不良とされる高リスク群においても深い奏効が得られており、固定期間の投与によるケモフリー治療として臨床的意義が極めて大きい。

Study overview

濾胞性リンパ腫は治癒困難な悪性リンパ腫であり、再発を繰り返し、その短い寛解期間により治療ライン数が増え最終的に治療の手札が無くなってしまうことも珍しくない。
再発難治の標準治療は存在せず、アウトカムを改善する新たな手段の獲得が必要である。
レナリドミドとリツキシマブを併用したR$^2$療法は濾胞性リンパ腫のケモフリーの治療手段として用いられてきた。
レナリドミドはFL誘導性のT細胞性機能異常を回復し、リツキシマブは抗体依存性細胞性貪食とNK細胞誘導性高退位依存性細胞毒性により抗腫瘍効果を発揮する。
R/R FLの第3相試験であるAUGMENT試験では全奏効率(ORR)78%、完全奏効率(CR率)34%、2年時点の推定無増悪生存(PFS)率は58%と良好な成績を収めましたが、特に初回治療から24か月以内の病勢進行(POD24)や、抗CD20抗体およびアルキル化剤の両方に抵抗性を示す症例では、より深く長期間の治療効果をもたらす更なる良い治療が求められている。
EPCORE NHL-2試験のアーム2(第1b/2相)において、1ライン以上の全身療法歴を有する再発・難治性濾胞性リンパ腫患者108名を対象に、最大2年間のエプコリタマブ投与および12サイクルのR2療法の併用が評価された。
主要評価項目は治験責任医師判定による全奏効率(ORR)であり、副次評価項目として完全奏効率(CR率)や微小残存病変(MRD)陰性率、無増悪生存期間(PFS)などが設定された。
エプコリタマブ(皮下投与):第1サイクルに2段階のステップアップ投与(0.16mgおよび0.8mg)を行い、その後48mgをフル用量として投与
        ▪ コホート2a:第1-3サイクルは毎週、第4-9サイクルは2週毎、以降4週毎に最大2年間投与
        ▪ コホート2b:第1-2サイクルは毎週、第3サイクル以降は4週毎に最大2年間投与
    ◦ リツキシマブ(静脈内投与):375 mg/m²、第1サイクルは毎週、第2-5サイクルは4週毎
    ◦ レナリドミド(経口投与):開始用量20mg、各28日サイクルの1-21日目に投与、最大12サイクル

Key findings

中央値28.2か月の追跡調査において、全奏効率は96%、完全奏効率は88%に達した。
高リスク群における完全奏効率も極めて良好であり、POD24症例で83%、primary refractory disease(初回の抗リンパ腫治療に対して抵抗性を示す症例)で90%、二重抵抗性症例(抗CD20抗体およびアルキル化剤の両方に抵抗性)で82%であった。
評価可能症例(72名(67%))におけるMRD陰性率は86%(10のマイナス6乗)と高く、深い奏効が裏付けられた。
2年時点の推定無増悪生存率は76%、全生存率は90%、次の治療を開始していない割合は84%であった。
安全性に関しては、好中球減少症(65%)、COVID-19(59%)、サイトカイン放出症候群(CRS、51%)が主な有害事象として認められた。
CRSは大部分が低グレードであり、CRSを理由としたエプコリタマブの中止例は認められなかった。

Clinical perspective

本研究の新規性は、固定期間投与のエプコリタマブ併用療法が、AUGMENT試験における完全奏効率34%を大幅に上回る治療効果を、高リスク群を含めて達成した点にある。
皮下投与製剤であるため、CAR-T細胞療法のような複雑なプロセスを介さず外来管理が可能であり、利便性と有効性を両立した治療選択肢となることが期待される。
本試験の制限事項として、単群試験であることや、追跡期間が濾胞性リンパ腫としては比較的短く、COVID-19による感染合併症が治療継続に影響を与えた点が挙げられる。
今後は、本併用療法を1年間の固定期間投与で検証する第3相ランダム化比較試験(EPCORE FL-1)の結果が待たれる。