Candida感染性心内膜炎におけるエキノキャンディン系薬と他治療レジメンの予後比較:スウェーデンの全国規模コホート研究

Candida感染性心内膜炎におけるエキノキャンディン系薬の有効性に関する研究 Recent Papers

Kurland S, Furebring M, Löwdin E, Olaison L, Sjölin J. Antifungal therapy in Candida infective endocarditis: a comparison of echinocandins and other treatment regimens in a nation-wide cohort study. Clin Infect Dis. Published online June 14, 2025. doi:10.1093/cid/ciaf312

Why this paper matters

Candida感染性心内膜炎(CIE)は致死率が極めて高く、その希少性から至適な抗真菌薬の選択に関するエビデンスが不足している。
現行のガイドラインではアムホテリシンB製剤に加えてエキノキャンディン系薬が推奨されているが、臨床背景が異なる患者群において両者の予後を直接比較したデータは限定的である。
本研究は、副作用の少ないエキノキャンディン系薬が実臨床の複雑な条件下で既存治療と同等の有効性を有するかを検証している。

Study overview

CIEはバイオフィルム形成能による治療抵抗性が特徴であり、抗真菌薬と外科的治療の併用が標準とされる。
実際に現場では多くの合併症の発症、乏しい治療反応、または薬剤副作用などで治療変更を要することも多く長期入院を要する。米国感染症学会のガイドライン(https://doi.org/10.1093/cid/civ933)では、アムホテリシン脂質製剤±±フルシトシン併用、またはエキノキャンディンの使用を推奨しているが、特定の薬剤の優越性は証明されていない。CIEは非常に稀な疾患であり、ランダム化比較試験が行いづらいことがその一因である。いくつかのケースシリーズや観察研究は存在するが、いずれも第一選択を一意に定めるものではない。
Arnold 2015, Rivoisy2018, Giuliano2017

本研究は1995年から2019年までのスウェーデン感染性心内膜炎レジストリ(SRIE)を用いた全国規模のコホート研究である。
38名の患者における51のCIEエピソードを対象とし、治療開始30日間の主要薬剤に基づいて、エキノキャンディン系薬群(22例)、アムホテリシンB製剤群(21例)、アゾール系薬群(8例)の3群に分類して比較した。
主要評価項目は院内死亡または再発と定義した治療失敗、副次評価項目は初回入院から1年間の全死因死亡率とし、解析には症例ごとの重複を考慮した一般化線形混合モデルが用いられた。

Key findings

治療失敗率はエキノキャンディン系薬群で32%(7/22例)、アムホテリシンB製剤群で38%(8/21例)、アゾール系薬群で62%(5/8例)であり、統計的な有意差は認められなかった(P=0.35)。
個別の評価項目である院内死亡率(14% vs 10% vs 25%、P=0.56)および再発率(18% vs 29% vs 38%、P=0.46)においても群間差はなかった。
初回入院からの1年死亡率は全体で26%であり、治療レジメンによる有意な差はみられなかった(P=0.18)。
エキノキャンディン系薬群は他群と比較して高齢であり、Charlson併存疾患指数が高いという背景の偏りがあったが、Candida parapsilosis_を除外したサブグループ解析においても治療失敗率に有意差は確認されなかった(P=0.33)。

Clinical perspective

エキノキャンディン系薬を選択された症例は、高齢や併存疾患といった負のバイアスを多く有していたにもかかわらず、アムホテリシンB製剤と比較して遜色のない臨床アウトカムを示した。
アムホテリシンB製剤では腎機能障害による投与中断や減量が頻在することから、安全性の高いエキノキャンディン系薬は、特に合併症を有するCIE患者において有力な選択肢となり得る。
リポソーマルアムホテリシンBの優越性を示唆した先行研究(Rivoisy C, et al: Clin Infect Dis 66: 825-32, 2018))との結果の乖離は、対象患者や菌種分布の差異に起因すると考えられる。
ただし、本研究ではC. parapsilosisに対してエキノキャンディン系薬が使用されておらず、この菌種に対する有効性については依然として慎重な判断を要する。
小規模な観察研究であるため統計的な精度には限界があり、前述のようになかなか難しいが多施設共同による大規模な前方視的検証が必要である。