未治療および再発・難治性CLLにおけるピルトブルチニブとイブルチニブの第III相直接比較試験:BRUIN CLL-314試験

BRUIN CLL-314試験:ピルトブルチニブとイブルチニブの第III相比較試験 Recent Papers

Woyach JA, Qiu L, Grosicki S, et al. Pirtobrutinib Versus Ibrutinib in Treatment-Naïve and Relapsed/Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma. J Clin Oncol. Published online December 7, 2025. doi:10.1200/JCO-25-02477

Why this paper matters

共有結合型(c)BTK阻害薬(cBTKI)は慢性リンパ性白血病(CLL)の標準治療であるが、オフターゲット毒性やC481変異による獲得耐性が臨床上の課題となっていた。
本研究は、非共有結合型(nc)BTK阻害薬(ncBTKI)ピルトブルチニブを”BTK阻害薬未治療例(初発・再発難治)”においてcBTK阻害薬イブルチニブと直接比較した初めて(再発難治においてはアカラブルチニブ(安全性で優位)ザヌブルチニブ(ORR, PFSで優位)いずれもありとイブルチニブを比較)の第III相試験であり、初治療を含む早期ラインにおける臨床的有用性と安全性を実証した点で重要な意義を持つ。

Study overview

cBTK阻害薬であるイブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブはCLL治療を劇的に改善したが、薬物動態学的な制限(生体内利用率の低さ(CYP3A4 による肝代謝を強く受ける)、半減期の短さ)や副作用による休薬・中止が奏効の持続に影響を及ぼしていた。
高い選択性を持つピルトブルチニブは、持続的な標的抑制が可能でC481変異(ibrutinib / acalabrutinib / zanubrutinib はいずれも BTKのCys481(C481)残基に共有結合)を介した耐性機序も克服できることから、cBTK阻害薬未治療例においてもより良好なアウトカムをもたらすのではないかと考えられた。

本試験は、BTK阻害薬未治療の未治療(TN)および再発・難治性(R/R)CLL/SLL患者662例を対象に、ピルトブルチニブ(200mg/日)とイブルチニブ(420mg/日)を1:1の割合で割り付けたグローバル多施設共同オープンラベルランダム化第III相試験である。
主要評価項目は、意図した治療集団(ITT)およびR/R集団における独立判定委員会(IRC)評価による全奏効率(ORR)とし、イブルチニブに対する非劣性を検証した。
統計解析では、全奏効率比について層別Wald検定を行い、ITT集団で0.88、R/R集団で0.86の非劣性マージンを設定している。

Key findings

主要評価項目であるIRC判定によるORRにおいて、ピルトブルチニブ群はイブルチニブ群に対し、ITT集団(n=662)(87.0% vs 78.5%; ORR比 1.11 [95% CI, 1.03-1.19]; P < .0001)およびR/R集団(n=437)(84.0% vs 74.8%; ORR比 1.12 [95% CI, 1.02-1.24]; P < .0001)の両集団で非劣性を証明した。
また、TN集団におけるIRC奏効率もピルトブルチニブ群で高い傾向が認められた(92.9% vs 85.8%)。
治験責任医師判定による無増悪生存期間(PFS)の記述的解析では、ハザード比(HR)がITT集団で0.57(95% CI, 0.39-0.83)、TN集団では0.24(95% CI, 0.10-0.59)と、ピルトブルチニブ群で良好な推移を示した。
IRCの判定によるサブグループ解析では、del(17p)の有無にかかわらず、ピルトブルチニブ群はイブルチニブ群よりも数値的に高い奏効率を示した。
この傾向は、IGHV非変異や複雑核型(3つ以上の異常)を持つ集団においても一貫して認められている。
安全性プロファイルについては、心房細動・粗動(2.4% vs 13.5%)および高血圧(10.6% vs 15.1%)の発現率がピルトブルチニブ群で低く、オフターゲット毒性の軽減が示唆された。
有害事象による治療中止率はピルトブルチニブ群で9.4%、イブルチニブ群で10.8%と概ね同等であった。

Clinical perspective

本研究の新規性は、これまでcBTK阻害薬既治療例への使用に限定されていたncBTK阻害薬が、フロントラインを含むBTK阻害薬未治療例においても既存薬に劣らない有効性と、より優れた心血管安全性を有することを示した点にある。
これにより、耐性変異の出現を抑制しつつ、毒性による中断を最小限に抑えて長期的な病勢コントロールを図る治療戦略の選択肢としてピルトブルチニブが浮上した。
アカラブルチニブやザヌブルチニブもイブルチニブより安全だが、ピルトブルチニブはさらに選択性が高く、心房細動などの副作用が極めて低い傾向がありより初発で使用しやすい。
効果の面においても前述の薬理学的問題や耐性克服による優位性もあり、ガイドラインの更新が待たれる。
本試験の制限として、PFSの追跡期間が中央値20ヶ月前後と短く、OSも含めた長期的なベネフィットの評価は今後の解析を待つ必要がある。
今後は、適切な治療戦略の確立に向け、継続中のPFS最終解析や他剤との比較データの蓄積が求められる。