心エコー指標LSを統合したALアミロイドーシス新病期分類AL-ISSの検証:現代の治療下における超高リスク群Stage IIICの同定

Clinical Trial – AL amyloidosis staging system (AL-ISS) Recent Papers

Why this paper matters

ダラツムマブ併用療法の普及によりALアミロイドーシスの予後は全体として改善したが、既存の病期分類ではダラツムマブの導入などによる治療の進展の中で極めて悪い予後不良集団を十分に識別できなくなっている。

Mayo 2012 Staging System

Prognostic Risk VariablesMarkerValue (Cut-off)Prognostic Variable Risk ScoreStage Based on Risk Score
TroponincTnT≥ 0.025 μg/L1Stage I (Risk score = 0)
hs-cTnT≥ 40 pg/mLStage II (Risk score = 1)
cTnI≥ 0.1 μg/LStage III (Risk score = 2)
BNPNT-proBNP≥ 1800 ng/L1Stage IV (Risk score = 3)
BNP≥ 400 ng/L
dFLCdFLC≥ 18 mg/dL (180 mg/L)1

Mayo 2004 Staging System with European Modifications

Risk FactorsMarkerValue (Cut-off)Stage Based on Risk Factors
TroponincTnT≥ 0.035 μg/LStage I (No risk factors)
hs-cTnT≥ 50 ng/LStage II (1 risk factor)
cTnI≥ 0.1 μg/LStage IIIA (2 risk factors: NT-proBNP 332 to <8500 ng/L or BNP 81 to <700 ng/L)
BNPNT-proBNP≥ 332 ng/LStage IIIB (2 risk factors: NT-proBNP ≥8500 ng/L or BNP ≥700 ng/L)
BNP≥ 400 ng/L


本研究は、血中バイオマーカーに心臓の機能的指標であLongitudinal Strain(LS)を統合した新分類「AL-ISS」を検証し、標準治療下でも生存期間中央値がわずか7ヶ月に留まる超高リスク群「Stage IIIC」を定義した点で臨床的意義が極めて大きい。

Study overview

ALアミロイドーシスの予後は心臓病変の程度に依存するが、ダラツムマブ導入後の現代においてMayo 2004改訂版やMayo 2012といった既存モデルの識別能が低下していることが課題であった。
そこで研究グループは、心室機能の感受性の高い指標であるLSを、既存のバイオマーカー(NT-proBNP、hs-TnT)に組み合わせることで、より精緻なリスク層別化が可能になるとの仮説を立てた。
本研究は、2015年から2024年に診断された2,493名の患者を対象とした国際共同研究であり、英国NACのコホート(n=573)をderivation cohort、欧州各施設、米国メイヨークリニック、および近年の英国NAC症例(n=1,920)をvalidation cohortとして用いている。
対象は全身性ALアミロイドーシスの新規診断例であり、評価項目としてバイオマーカー(NT-proBNP(閾値 332 ng/L および 8,500 ng/L)、hs-TnT(閾値 50 ng/L))と心エコーによるLSを用いたAL-ISSによる層別化を行い、主要評価項目を全生存期間(OS)とした。
統計解析には、カプランマイヤー法、Cox比例ハザードモデル、およびROC曲線によるLS閾値設定(LS ≥ –9%)が用いられている。

※LSは、心エコー図検査を用いて心筋の縦方向(心基部から心尖部方向)への収縮・短縮の割合をパーセンテージで測定する機能的指標である。
具体的な特徴と方法は以下の通りである。

  • 測定の原理: 心筋の短縮率を測定するもので、一般的には2次元スペックルトラッキング心エコー法(2D-STE)と呼ばれる技術が標準的な測定ガイドラインとして用いられる。
  • 数値の表現: LSは通常マイナスの値で示される。これは、収縮時に心筋が「短縮」することを反映しているためである。
  • 正常値と異常の判定: 健康な心臓では心筋が十分に短縮するため、数値はよりマイナス側に大きくなる(–18%以下、つまり–20%や–22%などが正常)。
  • アミロイドーシスの影響: 心アミロイドーシスが進行すると、心筋にアミロイドが沈着して柔軟性が失われ、収縮時の縦方向の動き(心尖部の垂直移動)が制限される。その結果、短縮率が低下し、数値がゼロに近づく(マイナスの値が小さくなる)
  • 臨床的な位置づけ: NCCNガイドライン(Specialized Testing Based on Orgam Involvementの項)では、心臓MRI(CMR)が実施不可能な場合や最適でない場合の代替選択肢、あるいは初期診断ワークアップの一環としてLS評価を伴う心エコーを推奨している

Key findings

まず、OS(全生存期間)の有意な予測因子として欧州改訂版のバイオマーカー、dFLC ≥ 180 mg/LLS ≥ –9%、および臥位収縮期血圧 < 100 mmHgが有意な予測因子として抽出された。多変量解析の結果、LS ≥ –9%はNT-proBNP(≥ 8,500 ng/L)およびhs-TnT(≥ 50 ng/L)と並び、独立した予後不良因子であることが確認された(dFLC ≥ 180 mg/LはOSの独立した予測因子として抽出されなかった)。
AL-ISSにより全症例はStage I、II、IIIA、IIIB、および新設されたIIICの5段階に層別化され、検証集団におけるStage IIICの生存期間中央値はわずか7ヶ月であった(Stage I-IIIAは未到達、IIIBは26ヶ月)。

Stage定義(バイオマーカーおよび LS の条件)
Stage INT-proBNP < 332 ng/L かつ hs-TnT < 50 ng/L
Stage IINT-proBNP ≥ 332 ng/L または hs-TnT ≥ 50 ng/L(いずれか一方のみ)
Stage IIIANT-proBNP 332–8,500 ng/L かつ hs-TnT ≥ 50 ng/L
Stage IIIBNT-proBNP ≥ 8,500 ng/L かつ hs-TnT ≥ 50 ng/L かつ LS < –9%
Stage IIICNT-proBNP ≥ 8,500 ng/L かつ hs-TnT ≥ 50 ng/L かつ LS ≥ –9%

特にダラツムマブ投与群(n=826)に限定した解析においても、Stage IIICの1年生存率は53%に留まっており、現代の強力な治療下でも依然として克服困難な集団であることが示された。
Stage IIICは、従来のMayo IV期やEuropean IIIB期よりも高い特異性と診断オッズ比で超高リスク例を識別しており、心エコーによる機能評価が予後予測において重要な付加価値を持つことが実証された。

Clinical perspective

本研究の新規性は、バイオマーカーのみでは腎機能低下などの影響により過大評価されやすかったリスク層別化において、LSという直接的な心機能指標を導入することで、真に予後不良な心病変を有する集団を抽出可能にした点にある。
現在のNCCNガイドラインでも推奨されているD-CyBorD療法(https://doi.org/10.1056/nejmoa2028631)を用いてもStage IIICの予後は極めて厳しく、こうした症例に対しては早期の心移植検討や、アミロイド線維を標的とした抗体薬などの新規戦略の導入が必要とされる。
本研究のLimitationとして、LSの測定には専用の解析ソフトウェアと習熟が必要であり、機種間の測定値のばらつきが完全に排除できない点が挙げられるが、国際的な多施設検証によりその実用性は支持されている。今後の展望として、Mayo 2004 Stage IIIa/IIIbやMayo 2012 Stage IVを対象としたアミロイド線維標的抗体の第3相試験(NCT04512235, NCT04504825, NCT04973137)などの進行中研究により、Stage IIICに対する治療成績の向上が期待される。