MSSA菌血症治療におけるセファゾリンのクロキサシリンに対する非劣性と優れた腎安全性の検証:CloCeBa試験

MSSA菌血症治療におけるセファゾリンの非劣性と安全性を検証したCloCeBa試験 Recent Papers

Burdet C, Saïdani N, Dupieux C, et al. Cloxacillin versus cefazolin for meticillin-susceptible Staphylococcus aureus bacteraemia (CloCeBa): a prospective, open-label, multicentre, non-inferiority, randomised clinical trial. Lancet. 2025;406(10517):2349-2359. doi:10.1016/S0140-6736(25)01624-1

Why this paper matters

MSSA菌血症の標準治療である抗ブドウ球菌用ペニシリンに対し、副作用の少なさから汎用されるセファゾリンの有効性を検証した初のランダム化比較試験である。
これまで観察研究に留まっていたセファゾリンの非劣性を証明するとともに、臨床的に懸念されていた腎毒性のリスク低減を明確に示した点で、薬剤選択の根拠を強固なものにした。

Study overview

黄色ブドウ球菌菌血症の標準治療はクロキサシリンなどの抗ブドウ球菌用ペニシリンであるが、過敏症や腎機能障害といった毒性(10%以上)、さらには供給不安定が課題となっていた。
セファゾリンは有望な代替薬として広く使用されているものの、blaZ遺伝子保有株におけるInoculum effectによる効果減弱の懸念があり、これまで第3相ランダム化比較試験による直接比較は行われていなかった。

本研究は、フランスの21施設で実施された非盲検多施設共同非劣性ランダム化比較試験であり、血管内デバイスや中枢神経感染の疑いがない18歳以上のMSSA菌血症患者を対象とした。
介入群はセファゾリン(25〜50mg/kg、8時間ごと)、対照群はクロキサシリン(25〜50mg/kg、4〜6時間ごと)を最初の7日間投与し、その後は主治医の判断で14日間以上の治療を継続した。
主要評価項目は、投与3日目(心内膜炎は5日目)の血液培養陰性化、90日時点での無再発、生存、および臨床的成功を組み合わせた複合評価項目とし、非劣性マージンを12%に設定して、intention-to-treat(ITT)集団で解析された。

Key findings

ITT解析の結果、主要評価項目を達成した割合はセファゾリン群で75%(109/146例)、クロキサシリン群で74%(108/146例)であり、群間差は-1%(95%CI: -11〜9%)と事前に設定された非劣性基準を満たした。
副次評価項目である90日生存率についても、両群ともに92%と同程度であった。
安全性に関しては、治験薬投与終了時点での重篤な有害事象の発現率がセファゾリン群で15%(22/146例)であったのに対し、クロキサシリン群では27%(40/146例)と有意に高かった。
特に急性腎障害の発現頻度は、クロキサシリン群の12%(15/128例)に対してセファゾリン群では1%(1/134例)に留まり、顕著な差が認められた。一方で、blaZ type A遺伝子保有株のサブグループ解析においては、症例数が限定的ではあるものの全体解析と同じ12%の非劣性マージンを設定しセファゾリンの非劣性は示されなかった(セファゾリン群 66%(19/29例) vs クロキサシリン群 78%(21/27例))。

Clinical perspective

本研究は、MSSA菌血症に対するセファゾリンの臨床的非劣性を、前向きランダム化比較試験によって初めて実証したRCTであり非常に重要な知見である。
感染症診療において、抗ブドウ球菌用ペニシリンに代わる選択肢として、より投与回数が少なく腎毒性リスクの低いセファゾリンを推奨する強力なエビデンスとなる。
ただし、重症例や深在性感染症、心内膜炎、中枢神経感染の症例が限定的あるいは除外されているため、全てのMSSA感染症に結果を一般化するには注意が必要である。
また、試験の限界として非盲検デザインであることや、ランダム化前の抗菌薬投与が結果を非劣性側に偏らせた可能性が否定できない。
高菌量(high inoculum)の条件下でセファゾリンの最小発育阻止濃度(MIC)が著しく上昇することが知られているblaZ type Aにおいての十分な検証が出来ておらず、blaZ type別の検証を要する。また、実臨床においてblaZ typeを症例毎に調べることは現実的でなく、課題となる。
今後は、心内膜炎などのより治療困難な感染症に焦点を当てた研究や、S. aureus Network Adaptive Platform Trial(NCT05137119)のような現在進行中のプラットフォーム試験によるさらなる検証を要する。