初発CBF急性骨髄性白血病に対する強力な化学療法へのダサチニブ上乗せ効果の検証:第3相AMLSG 21-13試験

CBF-AMLに対するダサチニブ上乗せの有効性と安全性を検証したAMLSG 21-13試験 Recent Papers

Döhner H, Späth D, Saadati M, et al. Phase 3 study of intensive chemotherapy with or without dasatinib in core-binding factor acute myeloid leukemia. Blood. Published online January 5, 2026. doi:10.1182/blood.2025030722

Why this paper matters

KIT変異を伴うことが多いコアバインディングファクター急性骨髄性白血病(CBF-AML, t(8;21)(q22;q22.1)/RUNX1::RUNXT1, AML with inv(16)(p13.1q22)/t(16;16)(p13.1;q22)/CBFB::MYH11)に対し、期待されていたダサチニブの上乗せ効果を第3相試験で否定した極めて重要な報告である。
これまでの単群試験による肯定的な結果を覆し、安易なマルチキナーゼ阻害薬の併用がベネフィットをもたらさないだけでなく、毒性を増強させることを明確に示した。

Study overview

CBF-AMLは予後良好群に分類されるが、約3分の1に認められるKIT変異が予後不良因子となることが知られている。
KIT遺伝子は染色体4q11-12領域に位置し、145kDの膜貫通型糖タンパク質をコードする。これはIII型受容体チロシンキナーゼファミリーに属し、リガンド結合後、受容体は二量体を形成し、リン酸化されて、増殖、分化、生存に関与する下流シグナル伝達経路を活性化する。リガンド非依存性のKIT活性化は、CBF-AMLおよびその他のヒト悪性腫瘍に関連する機能獲得型変異によって引き起こされる。
CBF-AMLでは、KIT変異はキナーゼドメイン内のKIT活性化ループ(Aloop)をコードするエクソン17、およびKIT受容体の細胞外領域にある進化的に高度に保存された領域をコードするエクソン8に最も頻繁に集積する。特にt(8;21)を伴うAMLにおけるエクソン17変異を含むKIT変異は、予後不良と関連している。
このKIT阻害作用を持つダサチニブの上乗せが治療成績を改善するとの仮説に基づき本試験が実施された。
18歳以上の初発CBF-AML患者202名を対象に、標準的な「3+7」誘導療法および高用量シタラビンによる地固め療法4サイクルを行う標準群と、これにダサチニブ100mg/日を併用(寛解導入療法: day8-21、地固め療法: day6-28)し、さらに12ヶ月間の維持療法(100mg/日)を行う介入群に1:1の割合でランダム化した。
主要評価項目は、血液学的および分子生物学的な指標を含むイベントフリー生存期間(EFS)と設定された。
解析はintention-to-treat集団を対象とし、年齢と疾患型で層別化したログランク検定およびCox比例ハザードモデルを用いて実施された。

Key findings

中央値63.4ヶ月の追跡期間において、主要評価項目であるEFSに両群間で有意差は認められず(HR 0.92, p=0.66)、4年EFS率は標準群41%、ダサチニブ群44%であった。
全生存期間(OS)や無再発生存期間(RFS)についても有意な改善は見られず、4年OS率はそれぞれ76%と78%であり、サブグループ解析においてもKIT変異の有無や疾患型によるベネフィットの差は確認されなかった。
一方で安全性に関しては、重篤な有害事象の発生率が標準群の36%に対しダサチニブ群では64%と有意に高く、特に大腸炎、急性腎障害、心房細動の頻度が介入群で高かった。
また、ダサチニブ群の16%が有害事象により治療を早期に中止された。

Clinical perspective

本研究は、これまでの単群試験であるCALGB 10801で示唆されていたダサチニブの併用効果を、第3相比較試験によって明確に否定し、逆に毒性を高めることを示した重要なものである。
試験はオープンラベルで実施され、特に維持療法期における副作用による脱落が一定数見られたことが、評価項目への影響を含め解釈上の留意点となるものの、総じて臨床的有用性は限定的である。
ダサチニブよりも特異性と活性が高いアバプリチニブ、ベズクラスチニブ、エレネスチニブなどの次世代KIT阻害薬が存在する。アバプリチニブは既に海外や日本で全身性マスト細胞症やGIST(消化管間質腫瘍)を対象に承認・使用されており、血液悪性腫瘍の分野でもこれらの次世代薬を用いた臨床試験が検討または実施され始めている。