Yan M, Gu X, Wang Y, Cao B. Effects of Baloxavir Marboxil Plus Neuraminidase Inhibitor vs Neuraminidase Inhibitor in High-risk Patients Hospitalized With Severe Influenza: A Post Hoc Analysis of the Flagstone Trial. Open Forum Infect Dis. 2025;12(8):ofaf439. Published 2025 Jul 25. doi:10.1093/ofid/ofaf439
Why this paper matters
重症インフルエンザにおけるバロキサビル マルボキシル(以下バロキサビル)とノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)の併用療法は、第3相試験であるFLAGSTONE試験の全体解析では臨床的改善までの時間(TTCI)を有意に短縮しなかったが、本解析はウイルス排泄が遅延しやすいハイリスク患者に焦点を当てている。
この特定の集団において、併用療法がNAI単剤療法と比較して28日死亡率を低下させる可能性を示した点は、重症患者の予後改善に向けた治療戦略を検討する上で重要な知見である。
Study overview
重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の併用療法は、ウイルス消失を早める戦略として期待されているが、臨床的な有用性については結論が出ていない。
本研究は、免疫不全、糖尿病、または慢性肺疾患(COPD、間質性肺疾患など)を有するハイリスク患者ではウイルス排泄が遅延し、併用療法の恩恵を受けやすいという仮説に基づき、FLAGSTONE試験(NCT03684044)のデータを用いて実施された事後解析である。
FLAGSTONE試験は、重症インフルエンザ(NEWS2スコアが4以上)で入院した患者を対象に、従来の標準治療であるノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)にバロキサビルを併用することの有効性と安全性を検証した、第3相ランダム化比較試験である。主要評価項目である臨床的改善までの時間 TTCI(NEWS2スコアが2以下に低下し24時間維持されるか、あるいは退院するまでの時間のいずれか早い方と定義)では中央値はバロキサビル群で97.5時間、対照群で100.2時間であり、有意な差は認められなかった(p=0.467)。
対象は、発症から96時間以内の重症インフルエンザで入院し、上述のハイリスク因子を少なくとも1つ持つ12歳以上の患者143名(mITTI集団)であり、バロキサビル+NAI群(92名)とプラセボ+NAI群(51名)に2:1で割り付けられた。
主要評価項目はTTCIとし、副次的に28日死亡率、ウイルス学的評価項目、および安全性を検討した。
統計解析には、層別化された一般化ウィルコクソン検定、カプラン・マイヤー法、および多変量Cox比例ハザードモデルが用いられている。
Key findings
ハイリスク集団全体におけるTTCIの中央値は、併用群で106.14時間、単剤群で122.13時間であり、有意な差は認められなかった(P = 0.48)。
しかし、インフルエンザA(H3N2)感染者に限定したサブグループ解析では、併用群のTTCIが97.53時間と、単剤群の172.42時間に比べて有意に短縮した(P = 0.013)。
また、28日死亡率は併用群で2.17%(2/92名)、単剤群で11.76%(6/51名)であり、併用群で有意に低かった(P = 0.02)。
ウイルス学的評価では、併用群においてウイルス排泄停止までの時間が有意に短く(HR 2.75, P < 0.001)、2日目時点でのウイルス力価の低下量も有意に大きかった。
安全性については、有害事象および重篤な有害事象の発現率に両群間で有意な差はみられなかった(P = 0.90, P = 0.42)。
Clinical perspective
本研究の新規性は、TTCIという症状ベースの指標では捉えきれなかった併用療法の便益を、死亡率の低下という極めて重要なアウトカムで示した点にある。
血液悪性腫瘍や免疫抑制療法下にある患者を含むハイリスク群において、強力なウイルス増殖抑制が病勢進行の防止に寄与する可能性が示唆された。ただし、本研究は事後解析であり、サンプルサイズが限定的であることや、両群間で年齢分布などの背景因子に差があることには留意が必要である。今後は、死亡率を主要評価項目に据えた大規模な検証試験が望まれる。


