Daver N, Vyas P, Huls G, et al. The ENHANCE-3 study: venetoclax and azacitidine plus magrolimab or placebo for untreated AML unfit for intensive therapy. Blood. 2025;146(5):601-611. doi:10.1182/blood.2024027506
Why this paper matters
強力化学療法不適応の未治療急性骨髄性白血病(AML)において、標準療法であるベネトクラクス+アザシチジン療法に抗CD47抗体マグロリマブを上乗せすることの臨床的有用性を検証した初の第3相試験である。期待されていた生存期間の延長が示されなかっただけでなく、感染症等の致死的な有害事象が増加したという結果は、今後の抗CD47療法開発や併用療法のあり方を検討する上で極めて重要な示唆を与えるものである。
Study overview
強力化学療法に不適応なAML患者に対する標準治療としてベネトクラクスとアザシチジンの併用療法が確立されているが、長期生存が得られる症例は依然として限られており、特にTP53変異例などの予後不良群に対する新規治療戦略が求められている。
マグロリマブはがん細胞上の抗貪食シグナルであるCD47を標的とするモノクローナル抗体であり、初期臨床試験においてベネトクラクスおよびアザシチジンとの併用で有望な有効性と安全性が示されていた。
本研究(ENHANCE-3試験)は、強力化学療法不適応の未治療成人AML患者378名を対象に、マグロリマブ+ベネトクラクス+アザシチジン群(マグロリマブ群)とプラセボ+ベネトクラクス+アザシチジン群(対照群)を1:1で割り付けた二重盲検ランダム化比較第3相試験である。
主要評価項目は全生存期間(OS)とし、副次評価項目には完全寛解(CR)率や安全性が設定された。統計解析では層別Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を推定し、中間解析において無効中止基準が事前に設定された。
Key findings
事前に規定された中間解析において、OSのHRが1.173と無効中止基準(HR=1.1)を上回ったため、本試験は早期中止となった。
最終解析における生存期間の中央値は、マグロリマブ群で10.7カ月、対照群で14.1カ月であり、マグロリマブの上乗せによるOSの改善は認められなかった(HR 1.178; 95% CI 0.848-1.637; p=0.3276)。6サイクル以内のCR率もマグロリマブ群41.3%、対照群46.0%と有意な差はみられなかった。
安全性に関しては、致死的な有害事象がマグロリマブ群で19.0%と、対照群の11.4%に比して高頻度であった。この差は主に、マグロリマブ群におけるグレード5の感染症(11.1% vs 6.5%)および呼吸器障害(2.6% vs 0%)の増加に起因していた。
なお、好中球減少症や発熱性好中球減少症の頻度は両群間で同程度であった。
Clinical perspective
本研究は、ベネトクラクス+アザシチジンという現在の標準治療に対し、抗CD47抗体を併用した際の有効性と安全性を第3相試験の規模で初めて明らかにしたものである。
初期試験での良好な結果に反し、検証的試験では生存ベネフィットを示せず、むしろ感染症関連死のリスクを高める可能性が示された。
背景として、本試験の対象集団にはTP53変異例やELNリスク不良群が、既報のVIALE-A試験と比較して多く含まれていた点が挙げられるが、分子学的サブグループ解析でもマグロリマブの優越性は確認されなかった。
本結果は、高齢AML患者における低強度化学療法の効果増強に直結しないという残念な結果であった。
標準治療にマグロリマブを上乗せすることで致命的な感染症が増加した具体的な理由は、現時点では不明とされている。好中球減少症や発熱性好中球減少症の発生率、および好中球減少による投与延期の頻度は同程度であり、全グレードの感染症発生率や、非致死的な肺炎の発生率は両群間で大きな差はなかったが、グレード5(致死的)の敗血症(6.9% vs 3.3%)や肺炎(3.7% vs 2.2%)が増加していることから、マグロリマブの併用が感染症を致命的なレベルまで重症化させやすくした可能性が考えられる。CD47が肺胞マクロファージの抗ウイルス機能を制限するなどの免疫調節に関与していることが示唆されており、これが臨床的な重症感染症に関与している可能性が議論されている。
今後は、抗CD47療法における感染症リスクの管理策の確立や、特定のバイオマーカーに基づいた対象の絞り込みが、同クラスの薬剤開発における重要な焦点となる。


