Paterson DL, Sulaiman H, Liu PY, et al. Cefiderocol versus standard therapy for hospital-acquired and health-care-associated Gram-negative bacterial bloodstream infection (the GAME CHANGER trial): an open-label, parallel-group, randomised trial. Lancet Infect Dis. Published online October 6, 2025. doi:10.1016/S1473-3099(25)00469-4
Why this paper matters
院内および医療関連グラム陰性菌血流感染症に対するセフィデロコルの非劣性を証明した初のランダム化比較試験であり、多剤耐性菌治療における本剤の具体的な立ち位置を明確にするものである。特にカルバペネム耐性菌やメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌を含む複雑な耐性プロファイルに対する臨床成績が示されており、既存治療が制限される状況下での薬剤選択に重要な示唆を与える。
Study overview
カルバペネム耐性菌を含むグラム陰性菌による血流感染症は極めて高い死亡率を伴うが、セフィデロコルの血流感染症における有効性を検証したランダム化比較試験はこれまで存在しなかった。
GAME CHANGER試験は、オーストラリアやアジア諸国の17施設で実施されたオープンラベル並行群間ランダム化比較試験であり、院内または医療関連グラム陰性菌血流感染症の成人患者を対象に、セフィデロコル(腎機能が正常な場合、2gを8時間ごとに3時間かけて静脈内投与)が標準治療に対して非劣性または優越性を示すかを検証した。
主要評価項目はランダム化から14日後の全死亡率に設定され、非劣性マージンは10%とされた。解析対象となった504名は、セフィデロコル群250名と、臨床チームが選択する最大3剤までの標準治療群254名に割り付けられた。
Key findings
主要評価項目である14日後の全原因死亡率は、セフィデロコル群で8%(250名中20名)、標準治療群で7%(254名中17名)であり、絶対リスク差1%(95% CI -3〜6)で非劣性が示された。
しかし、全体集団およびカルバペネム耐性菌サブセット(死亡率14%対10%)のいずれにおいても、セフィデロコルの優越性は証明されなかった。
特筆すべき点として、メタロ-β-ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌による感染症患者では、14日死亡率(31%対0%)および30日死亡率(50%対18%)ともにセフィデロコル群で数値的に高い傾向が認められた。
安全性に関しては、せん妄や発疹などの治験薬に関連する可能性のある重篤な有害事象はセフィデロコル群でのみ報告されたが、臨床的失敗や微生物学的失敗の割合は両群間で概ね同等であった。
Clinical perspective
本研究は、院内グラム陰性菌血流感染症においてセフィデロコルが標準治療に対し非劣性であることを臨床試験で初めて実証した点に新規性がある。
各臓器の重症感染症に対するセフィデロコルの治癒率を検証したCREDIBLE-CR試験では、有効性は同程度であったものの、アシネトバクター感染症に起因するセフィデロコル群の死亡率上昇が観察された。しかし、本試験のサブ解析では同様の傾向は認められず、特定の耐性菌診療における懸念を一部払拭する結果となっている。
ただし、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌に対する成績が標準治療を下回った点や、カルバペネム耐性菌サブセットのサンプルサイズが小さく決定的な結論を導き出せていない点は本研究の限界である。GAME CHANGER試験においてMBL産生腸内細菌目細菌の56%(27株中15株)がEUCAST基準で耐性(MIC >2 mg/L)と判定されており、一見集団のセフィデロコル耐性割合の問題のように見えるがそう単純ではなく、CREDIBLE-CR試験ではNDM(MBLの一種)産生菌の中にはセフィデロコルのMICが4 mg/Lや16 mg/Lといった高い値を示す株が含まれていたが、それでもMBL産生菌全体での臨床的治癒率はセフィデロコル群で75%に達し、標準治療群(29%)を大きく上回っていた。同論文では主要なカルバペネム耐性菌において、臨床的治癒率や微生物学的消失率と、ベースラインのセフィデロコルMIC値の間に関連は認められなかった」と結論づけている。また、GAME CHANGER試験は、CREDIBLE-CR試験(2019年4月終了)よりも後の期間(2019年11月〜2023年10月)に実施された。時間の経過とともに、MBL産生菌がセフィデロコルの有効性を損なうような「追加の耐性機序」を蓄積している可能性が指摘されている。
今後の展望として、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌に対する治療効果を改善するための、他のβ-ラクタマーゼ阻害剤等との併用療法の有効性を検証する研究が必要とされている。


