難治・再発AMLにおける移植前寛解導入療法の意義を問う:ランダム化比較第3相ASAP試験の長期解析結果

難治・再発AMLにおける移植前寛解導入戦略を検証したASAP試験 Recent Papers

Stelljes M, Middeke JM, Bug G, et al. Disease risk but not remission status determines transplant outcomes in AML: long-term outcomes of the ASAP trial.Blood. 2025;146(19):2293-2305. doi:10.1182/blood.2025028730

Why this paper matters

難治性または再発[急性骨髄性白血病]([AML])において、同種造血幹細胞移植([alloHCT])前に強力な救援化学療法で[完全寛解]([CR])を目指す現行の標準治療に対し、その臨床的有用性を直接的に検証した初のランダム化比較試験である。5年生存率の結果から、移植時の寛解状態よりも[ELNリスク分類]に基づく白血病の遺伝学的性質が予後を規定することを証明し、強力な救援療法の省略という選択肢を提示している。

Study overview

AMLにおいて移植前に救援化学療法でCRを目指す戦略(RIST)は一般的だが、その生存利益を証明する前向き試験のデータは存在しなかった。本研究は、RIST群と、強力な前処置を用いた即時の同種移植戦略(DisC群)を比較した多施設共同オープンラベルランダム化比較試験(ASAP試験)であり、本報告は先行して発表された短期解析結果の続報となる長期追跡データである。同報告では、移植後56日目における治療成功(形態学的完全寛解:CRの達成)数値上は3.4%高かったものの、信頼区間の下限(-5.8%)が設定したマージン(-5%)を下回ったため、統計学的な非劣性は証明されなかった。
対象は、初回寛解導入療法に抵抗性(骨髄芽球5%以上)または未治療形態学的再発のAML患者281名である。
RIST群は高用量シタラビン+ミトキサントロン(high-dose cytarabine 3 g/m 2 (1 g/m 2 for patients aged >60 years or with significant comorbidities) twice daily on days 1 to 3, and mitoxantrone 10 mg/m 2 on days 3 to 5)を投与し、DisC群は必要最小限の病勢コントロール( lowdose cytarabine or single doses of mitoxantrone 10 mg/m^2 を許容)後に前処置(fludarabine-modulated cytarabine and amsacrine (FLAMSA), or high-dose melphalan followed by total body irradiation or alkylator-based reduced-intensity conditioning)を用いた即時移植を行った。移植片宿主病予防として抗胸腺グロブリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸・モフェチルを使用した。
[主要評価項目]は移植後56日目の治療成功(CR達成)であり、副次評価項目として全生存期間(OS)などが設定された。
統計解析では、ELN 2022基準を用いたリスク再分類と、[ITT]に基づく長期生存解析が実施されている。

Key findings

[ITT解析]の結果、5年全生存率はDisC群で46.1%、RIST群で47.5%であり、両群間に有意差を認めなかった(P = 0.82)。
多変量Cox回帰分析において、OSを規定する有意な因子はELN 2022リスク分類(P < 0.0001)、年齢(P = 0.001)、および併存疾患(P = 0.046)であり、割り振られた治療群は予後に寄与しなかった(HR 1.08; P = 0.67)。
ELNリスク別の5年OSは、良好群66%、中間群53%、不良群34%であった。
また、前処置開始直前の骨髄芽球比率「5%〜20%(または5%未満だが髄外病変あり)」の群を基準とした場合、5%未満群のハザード比(HR)は0.43、20%〜50%群は1.00、50%以上群は1.16であり、芽球量が多いことが生存率を直接的に悪化させる要因にはならなかった。

Clinical perspective

本研究の新規性は、移植後の生存率を決定するのは移植時の寛解状態ではなく、治療前に決定されるAMLの遺伝学的リスクであることを前向きに示した点にある。
これにより、強力な前処置を用いる環境下では、毒性の高い標準的な救援化学療法を回避して早期に移植へ進む戦略の妥当性が示された。
移植前の芽球減少に固執するよりも、入院期間の短縮や医療費抑制の観点からも即時移植は臨床的に合理的な選択となり得る。
ただし、著者らはTP53変異例などの極めて予後不良な群では依然として治療成績が低く、移植前に強力な化学療法で寛解を目指しても生存率が改善しないという本試験の結果から、移植後の再発予防に重点を置くべきとしている。さらなる予後改善にはブリッジング療法や移植後の維持療法における分子標的薬の活用が期待される。