Johansen ND, Modin D, Pardo-Seco J, et al. Effectiveness of high-dose influenza vaccine against hospitalisations in older adults (FLUNITY-HD): an individual-level pooled analysis. Lancet. 2025;406(10518):2425-2434. doi:10.1016/S0140-6736(25)01742-8
Why this paper matters
高齢者における高用量インフルエンザワクチン(HD-IIV)は、標準用量(SD-IIV)と比較して感染予防効果が高いことは既知であったが、入院や死亡といった重症化転帰を抑制する強固なエビデンスは不足していた。
本研究は46万人規模の個別ランダム化試験の統合解析により、HD-IIVがインフルエンザや肺炎、さらには全原因による入院を有意に減少させることを決定的に示しており、高齢者におけるワクチン戦略の最適化を促す重要な知見である。
Study overview
高齢者はインフルエンザによる重症化リスクが高い一方で、標準用量ワクチンの効果は限定的であることが課題となっていた。
FLUNITY-HDは、デンマークのDANFLU-2試験とスペインのGALFLU試験という、手法を統一した2つの実用的ランダム化比較試験のデータを事前に規定されたプロトコルに基づき統合した解析である。
対象は65歳以上の高齢者466,320例であり、各株60μgの血球凝集素抗原を含むHD-IIV群と、15μgを含むSD-IIV群に1:1の割合でランダムに割り付けた。
主要評価項目は、ワクチン接種14日後から翌年5月31日までの期間におけるインフルエンザまたは肺炎による入院とした。統計解析は意図した治療(ITT)原則に従い、相対的ワクチン有効率(rVE)を算出した。
Key findings
主要評価項目であるインフルエンザまたは肺炎による入院は、HD-IIV群で0.56%(1,312/233,311例)、SD-IIV群で0.62%(1,437/233,009例)に認められ、HD-IIV群で有意に入院リスクが低かった(rVE 8.8%、95% CI 1.7–15.5、p=0.0082)。
副次評価項目では、検査診断されたインフルエンザによる入院において31.9%(95% CI 19.7–42.2)、心肺疾患による入院において6.3%(95% CI 2.5–10.0)、全原因入院において2.2%(95% CI 0.3–4.1)の有意なリスク減少がHD-IIV群で確認された。
一方で、全原因死亡については両群間で有意な差は認められなかった(rVE 1.2%、95% CI -6.3–8.3)。
重篤な有害事象の発生数はHD-IIV群で16,032件、SD-IIV群で15,857件と報告されており、安全性プロファイルは両群で概ね同等であった。
Clinical perspective
本研究の新規性は、高齢者を対象としたインフルエンザワクチンにおいて、高用量製剤が入院という重症化転帰を抑制することを、46万人を超える大規模な個別ランダム化試験の統合によって初めて証明した点にある。
これは、特定の感染症予防を超えて、心肺疾患や全原因入院といった臨床的に極めて重要なアウトカムに対し、HD-IIVが公衆衛生上の大きな便益をもたらす可能性を示唆している。
本解析には、実臨床データへの依存や地域間での診断コーディング慣習の不均一性といった制限があるものの、全原因入院などの広範な指標で一貫した便益が示されたことは結果の信頼性を補強している。
今後の展望としては、地域ごとの検査体制や診断コードの違いが肺炎関連の評価に及ぼす影響についてのさらなる詳細な調査が求められる。


