Chari A, van de Donk NWCJ, Dholaria B, et al. Talquetamab plus daratumumab for the treatment of relapsed or refractory multiple myeloma in the TRIMM-2 study. Blood. 2025;146(24):2902-2913.
doi:10.1182/blood.2025029360
Why this paper matters
本研究は、再発または難治性の多発性骨髄腫(R/R MM)患者に対し、GPRC5D標的(G protein–coupled receptor class C group 5 member D–targeting)二重特異性抗体トアルクエタマブと抗CD38抗体ダラツムマブの併用療法が、強力な有効性と単剤療法と一貫した安全性を示すことを明らかにしたものである。
特に、BCMA(B-cell maturation antigen)標的療法やT細胞誘導療法などの強力な前治療歴がある患者群においても、高い奏効率と持続的な反応が得られることを示した点で重要である。
Study overview
多発性骨髄腫治療において、BCMAやGPRC5Dを標的とした、これまでよりも高い奏効率を発揮する治療法が登場しているが、その中でも不応または再発・難治性となる症例もあり、さらなる治療選択肢のニーズが残されている。
トアルクエタマブはGPRC5DとCD3を標的とする二重特異性抗体であり、再発難治例での承認試験であるMonumenTAL-1試験(第1/2相試験)では69%で奏効が得られ、無増悪生存期間中央値は0.4 mg/kgを週1回投与(QW群)、0.8 mg/kgを2週に1回投与(Q2W群)で、それぞれ7.5か月、11.2か月という結果であった。GPRC5DはBCMAと比較して感染症発生率が低いことが知られており、これは正常造血細胞におけるGPRC5D発現が限定的であることが想定される。さらに、ダラツムマブ併用による免疫調節作用によって免疫抑制細胞が減少し、トアルクエタマブの作用を助ける相乗効果が前臨床データから期待されている。
本研究は、これら2剤の併用が単剤療法よりも深く持続的な奏効をもたらすという仮説を検証するために実施された。
研究デザインは、米国、カナダ、欧州の多施設で実施されている進行中のフェーズ1b、非盲検、多コホート介入研究(TRIMM-2試験)である。対象は、3ライン以上の前治療歴がある、またはプロテアソーム阻害薬および免疫調節薬に対して二重難治性である18歳以上のR/R MM患者である。
介入として、トアルクエタマブの承認スケジュールであるQW群、またはQ2W群にダラツムマブ1800 mgを併用した。
主要評価項目は安全性(用量制限毒性など)であり、副次評価項目として奏効率および奏効期間が設定され、無増悪生存期間は探索的評価項目とされた。
安全性解析は、少なくとも1回の薬剤投与が行われた全患者を対象とした。
統計解析は記述的にまとめられ、奏効期間および生存率はカプラン・マイヤー法を用いて推定された。
Key findings
中央値5ラインの前治療歴を有する65例(QW群=14例、Q2W群=51例、フォローアップ中央値=18.6か月)を対象とした。主要な結果として、全体の奏効率はQW群で71.4%、Q2W群で82.4%に達し、両群ともに約57%の患者が完全奏効(CR)以上の深い反応を示した。
臨床的に重要な点として、抗CD38抗体治療に難治性の患者(77%)や、過去にT細胞誘導療法(CAR-T細胞療法、二重特異性抗体)を受けた患者(77%)、BCMA標的療法を受けた患者(71%)においても、高い奏効率が維持されていた。
無増悪生存期間の中央値はQW群で23.3か月、Q2W群で21.2か月であり、全生存期間の中央値は解析時点で未到達であった。
安全性に関しては、各薬剤を単剤で使用した場合の既知のプロファイルと一致しており、主な有害事象は口腔内事象、皮膚事象、サイトカイン放出症候群(CRS)、感染症であった。
Grade 3または4の有害事象は81.5%に認められた。
CRSは患者の78%に発生したが、すべてグレード1または2であり、治療初期のステップアップ投与時に集中していた。
また、グレード3または4の感染症は29%の患者に認められたが、感染症による治療中止例はなかった。
Clinical perspective
本研究の新規性は、GPRC5D標的の二重特異性抗体と抗CD38抗体を組み合わせることで、ダラツムマブが免疫抑制的な調節性T細胞を減少させ、トアルクエタマブが効果を発揮しやすい免疫環境を整えるという作用機序を示した点にある。BCMA標的療法後の次なる有力な選択肢として、また他の多発性骨髄腫治療薬と組み合わせる際の汎用性の高いパートナーとして、本併用療法を活用できる可能性がある。
ナイーブな比較ではMonumenTAL-1試験よりも奏効率が高く見えるが、本試験はハイリスク核型、ISSステージ3、3クラス耐性の割合が低く、比較研究による検証が必要である。
ダラツムマブ併用による副作用の悪化は認められず、治療スケジュールの変更はMonumenTAL-1試験と同等であった。
今後の展望として、本併用療法の有効性と安全性をさらに確定させるため、現在、第3相試験であるMonumenTAL-3試験(NCT05455320)が進行中であり、より早期の治療ラインにおける役割も検討されている。
