低リソース設定の市中肺炎に対する低用量グルココルチコイド併用療法の死亡率減少効果:ケニアにおける大規模プラグマティック試験(SONIA試験)

CAPにおけるステロイド併用療法の臨床試験(SONIA試験) Recent Papers

Lucinde RK, Gathuri H, Mwaniki P, et al. A Pragmatic Trial of Glucocorticoids for Community-Acquired Pneumonia. N Engl J Med. 2025;393(22):2187-2197. doi:10.1056/NEJMoa2507100

Why this paper matters

サハラ以南アフリカのように市中肺炎(CAP)の致命率が先進国の3〜5倍に達する低リソース設定において、安価な経口グルココルチコイドが30日死亡率を有意に改善することを示した画期的な報告であ。
高リソース設定でのICU管理を前提とした知見を、診断能力やICUアクセスが限定的な日常診療の文脈へと拡張し、実用的かつ費用対効果の高い治療選択肢を提示している。

Study overview

先進国では重症CAPに対するグルココルチコイドの有用性が示唆されてきたが、低リソース設定における有効性と安全性は未確立であった。
本研究はケニアの公立病院18施設の一般病棟で実施された「プラグマティック非盲検ランダム化比較試験」であり、臨床的にCAPと診断された成人入院患者2180名を対象とした。
患者を標準治療群、または標準治療に加えて5種類のいずれかの経口低用量グルココルチコイド(経口投与が困難な場合は静脈内投与)を10日間投与する群に1対1でランダムに割り付けた。
主要評価項目は登録から30日後の全死因死亡率とし、層別化したCox回帰モデルを用いてハザード比を算出した。

Key findings

30日死亡率はグルココルチコイド群で22.6%(246/1089名)、標準治療群で26.0%(284/1091名)であり、介入群で死亡リスクが有意に低下した(ハザード比 0.84; 95%信頼区間 0.73-0.97; P=0.02)
副次評価項目である7日、14日、21日時点の死亡リスクも主要解析と一貫した結果であった。
安全性については、介入群の29.4%で薬剤関連の有害事象(主に高血糖症)が報告されたが、重篤な有害事象の発現頻度は両群間で同等(4.0%対4.4%)であり、グルココルチコイドに関連する重篤な事象は0.5%に留まった。

Clinical perspective

本研究の新規性は、特定の重症度評価や高度な画像診断が困難なリアルワールドの制約下において、グルココルチコイドの生存利益を大規模に実証した点にある。効果量はDequin P-F, Meziani F, Quenot J-P, et al: Hydrocortisone in severe community-acquired pneumonia. N Engl J Med 388: 1931-41, 2023(CAPE-COD試験)のハザード比0.53を下回るものの、若年でHIV感染等の併存疾患が多い集団における有効性を裏付けている。
非盲検デザインや診断の不均一性による過小評価の可能性といった限界はあるが、安価な介入による恩恵は極めて大きい。
今後は血糖モニタリング体制を前提とした低リソース環境での新たな標準治療として検討されるべきだが、先進国のような高リソース設定の全入院CAP患者への一律の適用には、さらなる検証を要する。