大細胞型B細胞リンパ腫における治療終了時Phased Variant支援ctDNA MRDの臨床的有用性

大細胞型B細胞リンパ腫の治療終了時におけるPV支援型ctDNA MRD評価に関する研究 Recent Papers

Krupka JA, Moutsopoulos I, Cutmore NH, et al. Phased Variant-Supported Circulating Tumor DNA as a Prognostic Biomarker After First-Line Treatment in Large B-Cell Lymphoma: Findings From the DIRECT Study. J Clin Oncol. 2026;44(5):410-420. doi:10.1200/JCO-25-01587

Why this paper matters

初回治療後の大細胞型B細胞リンパ腫における再発リスク評価において、従来のPET-CTによる画像評価は感度および特異度の面で限界がある。
本研究は、感度を大幅に向上させたPhased Variant(PV)支援型ctDNA解析が、臨床現場で標準的な画像評価を補完あるいは凌駕する予後予測マーカーとなり得ることを示した。

Study overview

従来のctDNA解析における背景ノイズの問題を解決するため、PVに着目し、その微小残存病変(MRD)検出能を検証した。
PVとは、単一のシーケンシングリード(読み取られた個々のDNA断片データ)内に存在する、複数の変異の組み合わせを指し、B細胞が胚中心を通過する過程で生じる、特定のゲノム領域に集中した高頻度体細胞変異(SHM)のクラスターを利用したものである。
単一の塩基変異(SNV)はシーケンシング時の読み取りエラー(ノイズ)と区別が困難な場合があるが、特定の複数の変異が同一のDNA断片上に偶然同時に生じる確率は極めて低い。したがって、PVを追跡することで、検出された変異が確実にリンパ腫由来であると断定でき、背景ノイズを大幅に排除し、従来のSNV追跡では10^(−4)(1万分の1)程度が限界だった感度を、10^(−6)(100万分の1、1 ppm)という極めて微量なレベルまで引き上げることができる。

英国の6施設から未治療の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者198名を前方視的に登録したDIRECT試験において、初回治療終了時(EoT)におけるPV-MRDの有無と予後との関連を評価した。
主要評価項目を腫瘍進行までの期間(TTP)とし、独自のオープンソース解析パイプラインを用いて、標準的な治療強度である通常用量のアントラサイクリン系薬剤を含む免疫化学療法を受けた患者のみに限定した全アントラサイクリン系薬剤投与群(Cohort 2、n=151)を含む解析対象集団において、PET-CTの結果および国際予後指標(IPI)との比較を含む多変量解析を実施した。

Key findings

EoTにおけるPV-MRD陽性例の2年TTP率は42.2%であったのに対し、陰性例では95.4%と極めて良好であり、ハザード比(HR)13.7(P < .001)であった。
Cohort 2に限定した解析でも、2年TTP率は陽性例44.8%対陰性例95.8%(HR 15.35)となり、PV-MRD(HR 16.89)は画像的評価(HR 6.79)と比較して、より強力な予後予測能を示した。多変量解析においても、PV-MRDは画像診断の結果に依存しない、独立した強力な予後因子であることが確認されている。
PET陰性例であってもPV-MRD陽性であれば2年TTP率は57.7%まで低下し、逆にPET陽性例でもPV-MRD陰性であれば2年TTP率は90.9%に達することが確認された。
検出限界(LoD95)は患者ごとに2桁以上の差があり、術前の生検検体を用いた遺伝子型特定が血漿のみの手法よりも78%の症例で感度向上に寄与した。

Clinical perspective

画像診断で寛解と判定された症例における潜在的な再発リスクの層別化や、画像偽陽性症例のバイオマーカーによる除外が可能になる点は、今後の臨床試験の設計および日常診療における治療戦略の個別化に寄与する。
Roschewskiらが報告した知見を、独自のオープンソース手法を用いて独立したコホートで検証した意義は大きい。
ただし、形質転換濾胞性リンパ腫等の症例では、低悪性度コンポーネント由来のクローンが持続することで、臨床的再発を伴わないPV-MRD陽性(偽陽性)を示す可能性に留意すべきである。
今後は、ガイドラインが推奨する1ppmの検出限界を達成するための至適な血漿量やシーケンス深度の確保が実用化への課題となるが、Kurtzらが提唱したPV技術の有用性は本研究によりさらに強固なものとなった。