Kowalski A, Lykon J, Diamond B, et al. Tocilizumab prophylaxis for patients with multiple myeloma treated with bispecific antibodies. Blood Adv. 2025;9(19):4979-4986. doi:10.1182/bloodadvances.2025016911
Why this paper matters
BCMAまたはGPRC5Dを標的とする二重特異性抗体は高い治療効果を有する反面、サイトカイン放出症候群(CRS)に伴う入院管理が臨床上の大きな負担となっている。
本研究は、トシリズマブの予防投与が治療効果を維持したままCRSの発症率を大幅に低減させることを示しており、医療資源の適正化や外来管理への道筋を提示する点で意義深い。
Study overview
二重特異性抗体療法におけるCRS管理は通常、発症後の対応に依存しているが、予防的介入の有用性に関するリアルワールドでの知見は限定的であった。
本研究は、FDA承認済みまたは試験段階の二重特異性抗体(teclistamab、elranatamab、linvoseltamab、talquetamab)を投与された多発性骨髄腫患者119名を対象に、最初のステップアップ投与の1時間前にトシリズマブ8 mg/kg(最大800 mg)を単回静脈内投与する介入の有効性と安全性を検証した。
主要な目的は、奏効率への影響の有無およびCRS発症状況の評価であり、登録治験から除外されるような背景を持つ症例を63.9%含むリアルワールドデータとして解析された。
Key findings
全体におけるCRS発症率は10.1%(95%CI 5.3-17)と極めて低く、薬剤別ではteclistamab 8.9%、elranatamab 12.5%、linvoseltamab 0%、talquetamab 13%であった。
CRSの重症度は12件中10件がグレード1であり、グレード3以上の発症は認められず、管理のための追加のトシリズマブやステロイド投与も必要としなかった。
評価可能症例105名における奏効率(ORR)は65.7%(95%CI 55.8-74.7)であり、各薬剤の登録治験の結果と比較して遜色ない結果であった。
一方で、ICANSの発症率は全体で5.9%であり、特にtalquetamab投与群において17.4%と高く、グレード3の症例が認められた。
Clinical perspective
本研究は、標的抗原の異なる複数の二重特異性抗体においてトシリズマブの予防投与が共通して有効であることを示した。
MajesTEC-1試験などの登録治験データと比較しても、奏効率を損なうことなくCRS発症率を大幅に抑制しており、現在の入院を前提とした管理モデルを外来へ移行させるための重要な論拠となり得る。ICANSへの影響については、特にGPRC5D標的薬においてCRSの症状が強く現れていたために、同時に発生していたICANSが見逃されたり、過小評価されていた可能性があり、今後の詳細な検証が必要である。
プラセボ対照群を欠く単施設研究という制約はあるものの、テクリスタマブステップアップ投与2〜4時間前に、トシリズマブ 8 mg/kgを静脈内投与を行い、外来で行えるかを評価したOPTec試験等の進行中の研究結果と合わせ、予防的介入が標準的なケアに組み込まれることが期待される 。

