Corona M, Brown S, Rejeski K, et al. Late hematologic toxicity after CAR T-cell therapy in large B-cell lymphoma: incidence, risk factors, and clinical impact.(https://doi.org/10.1038/s41409-025-02745-5) Bone Marrow Transplant. 2026;61(2):142-148. doi:10.1038/s41409-025-02745-5
Why this paper matters
CAR-T細胞療法後の血球減少は一般的な合併症であるが、投与30日以降に発生する後期毒性、特にICAHT(Immune Effector Cell-Associated HematoToxicity)グレーディングを用いた詳細な評価や、血小板減少・貧血を含めた包括的な臨床的影響の解析は十分になされていない。本研究はICAHT分類を適用して後期血液毒性の頻度とリスク因子を同定し、それが後期感染症のリスク増大に直結することを明らかにしており、長期フォローアップにおける体系的なモニタリングの必要性を示唆している。
Study overview
CAR-T療法後の血球減少は遷延性かつ間欠的(二相性)な性質を持ち、従来のCTCAEではその時点での血球数値の低さ(深さ)だけでグレードを判定する事から、血球減少期間という臨床的重要な指標を十分に捕捉できないため、好中球減少の深さと期間を考慮したEHA/EBMTによるICAHTグレーディングが提唱された。
ICAHTグレーディングでは、好中球減少(ANC < 500/μL)が「7日未満」か「7〜13日」か「14日以上」かによって、グレードを細分化しており、真にリスクの高い「遷延する症例」を特定できるようになっている。また、投与後30日以内を「早期」、30日以降を「後期」と明確に分けることで、それぞれの時期に応じたリスク管理を可能にした。
本研究は、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターにおいてCD19標的CAR-T療法を受けた大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者290例を対象としたレトロスペクティブ研究である。
主要評価項目として、投与30日から100日までの後期血液毒性(ICAHT、血小板減少、貧血)の累積発生率を設定し、早期毒性(30日以内)やリンパ球除去療法前の臨床因子、各種リスクスコア(CAR-HEMATOTOX等)との関連を多変量解析を用いて評価した。
Key findings
早期ICAHT(グレード1以上)は患者の78%に認められた。100日時点における後期血液毒性の累積発生率は、後期ICAHT(グレード3以上)が22%、中等度から重度の血小板減少(<50×10³/μL)が20%、中等度から重度の貧血(<8g/dL)が14%であった。
リンパ球除去療法前の予測因子として、高リスク(2点以上)のCAR-HEMATOTOXスコアは後期重症ICAHT(HR 3.09、p<0.001)、後期重症血小板減少(HR 10.2、p<0.001)、後期中等度から重度貧血(HR 7.19、p<0.001)の全てと独立して関連し、低ヘモグロビン値も一貫したリスク因子であった。
また、早期の重症ICAHT(グレード3以上)は、後期の重症ICAHT(HR 4.04、p<0.001)、重症血小板減少(HR 4.52、p<0.001)、および中等度から重度の貧血(HR 2.09、p=0.037)の発症と独立して関連していた。
臨床的影響として、後期の重症ICAHTの発症は後期感染症のリスクを約3倍に上昇させたが(HR 2.85、p=0.032)、全生存期間への直接的な影響は確認されなかった。
Clinical perspective
本研究では、新規のICAHT分類を実臨床データに適用し、急性期を超えた血液毒性が感染症という具体的な臨床アウトカムに寄与することを示した。また、リンパ球除去療法前の時点で、CAR-HEMATOTOXスコアやヘモグロビン値といった既存の指標から、長期的な血液学的高リスク群を事前に特定可能であることを示した。
これにより抗菌薬予防の延長やG-CSF製剤、血小板増多薬の早期介入を検討する臨床判断の指標となり得る。
本研究は単一施設でのレトロスペクティブ解析であり、血球減少の間欠的な性質の評価や無症候性感染症の捕捉に限界を残すものの、ICAHTグレーディングを後期のCAR-Tモニタリングの標準的な枠組みとして組み込む妥当性を強く支持している。
同様の自動計算アルゴリズムを用いた検証が他施設でも進んでおり、今後の管理ガイドラインへの反映が期待される 。


