Sam J, Leclercq-Cohen G, Gebhardt S, et al. Preclinical advances in glofitamab combinations: a new frontier for non-Hodgkin lymphoma. Blood. 2025;146(15):1824-1836. doi:10.1182/blood.2025028863
Why this paper matters
本論文は、CD20標的T細胞エンゲージャー(TCE)であるグロフィタマブが、標準治療や新規薬剤との併用により治療抵抗性を克服する機序を前臨床モデルで示した。特に、抗原発現の不均一性やT細胞疲弊といった臨床上の課題に対し、抗体薬物複合体(ADC)や化学療法がどのように相乗効果をもたらすかを明示し、早期ラインへの適応拡大に向けた理論的基盤となるだろう。
Study overview
TCEは再発・難治性B細胞性非ホジキンリンパ腫で高い有効性を示すが、さらなる奏効率の向上や早期ラインへの展開には、抗原消失やT細胞疲弊による抵抗性の克服が不可欠である。
本研究は、グロフィタマブと標準治療(R-CHOP、GemOx)やADC(Pola)、あるいは新規の化学療法フリー製剤との併用が、腫瘍微小環境およびT細胞機能に与える影響を検証することを目的とした。
ヒト造血幹細胞を移植したヒト化マウスモデル(NSG、BRGS-CD47)を用いた体内(in vivo)試験、および第III相STARGLO試験(NCT04408638)と第Ib相SKYGLO試験(NCT03467373)の参加患者から採取された末梢血単核球(PBMC)を用いたトランスレーショナル解析が実施された。
解析対象はCD20発現レベルが異なる複数のDLBCL細胞株モデルであり、主要評価項目として腫瘍増殖抑制効果(TGI)、腫瘍内T細胞浸潤、および活性化・疲弊マーカーの発現が設定された。
Key findings
グロフィタマブとR-CHP-Polaの併用は、R-CHOPとの併用群と比較して有意な腫瘍増殖抑制を示し、低CD20発現モデルにおいてマウスモデル10匹中7匹で腫瘍消失を達成した。
Polaは腫瘍細胞のCD20発現密度を上昇させ、CD20陰性クローンのエスケープを抑制することでグロフィタマブの殺細胞効果を増強することが確認された。また、GemOxとの併用は腫瘍内のCD8陽性T細胞の浸潤と活性化を促進し、PD-1およびTim-3の発現低下を伴うT細胞機能の維持に寄与した。
新規の化学療法フリー戦略では、CD19標的4-1BBL(CD19-4-1BBL)やCD19-CD28二重特異性抗体(CD19-CD28)との併用により、R-CHOPを上回る腫瘍制御能が示され、これらの三剤併用療法では75%から100%の個体で腫瘍縮小が維持された。
CD19-4-1BBLおよびCD19-CD28は、いずれもT細胞の活性化を補助する「シグナル2」を提供する共刺激アゴニスト(Costimulatory agonists)である。前者はT細胞の4-1BB(CD137)を、後者はT細胞のCD28を刺激することでT細胞の活性化と増殖を増幅し、TCEの細胞傷害能を強化するとともに、奏効の持続性を高める(T細胞の疲弊を抑制)役割を担う。
患者検体を用いた解析では、R-CHOP併用下でリンパ球減少が認められた一方、残存するT細胞の殺細胞能は維持されており、GemOx併用群でも複数の治療サイクルにわたりT細胞機能が保持されることが確認された。
Clinical perspective
本研究は、ADCであるPolaがCD20発現を能動的にアップレギュレーションし、TCEの標的抗原不足を補完する機序を解明した点が重要である。
これは抗原発現が不均一な症例における治療戦略の最適化に直結し、従来の化学療法を補完または代替する選択肢としての可能性がある。
前臨床モデルでの知見であるため、ヒトの複雑な免疫微小環境を完全には再現できていない点は限界であるが、STARGLO試験などの臨床試験の結果を支持する強固なエビデンスとなっている。
また、本サイトでも紹介した、グロフィタマブと同じ二重特異性抗体であるモスネツズマブとPolaの併用療法の第三相試験(SUNMO試験)では高い安全性と高い効果を示し、高齢者などの移植非適応患者への適応が期待されている。

今後は、CD19-4-1BBLやCD19-CD28を用いた完全な化学療法フリーのレジメンについて、現在進行中の第I/II相試験(NCT05219513、NCT04077723)を通じてその臨床的有用性が検証される予定である。


