Corynebacterium macclintockiaeの同定と薬剤耐性プロファイル

C. jeikeium錯体におけるC. macclintockiaeの同定と薬剤耐性プロファイル Recent Papers

Harada S, Komori K, Yukawa K, et al. Genomic epidemiology and antimicrobial resistance of Corynebacterium macclintockiae, the predominant species of human pathogens within the Corynebacterium jeikeium complex. J Clin Microbiol. 2025;63(8):e0050025. doi:10.1128/jcm.00500-25

Why this paper matters

血液悪性腫瘍や免疫不全患者における主要な病原体とされてきたCorynebacterium jeikeiumの多くが、実際には近縁の新種であるCorynebacterium macclintockiaeであることをゲノム解析によって明らかになった。この種の同定の不正確さは従来の臨床診断や疫学評価に影響を与える可能性があり、多剤耐性傾向を持つ本菌に対する適切な治療選択肢を再考する上で不可欠な知見である。

Study overview

Corynebacterium jeikeiumはCorynebacterium diphtheriae, Corynebacterium ulceransを除く低病原性細菌と異なり、特に血液悪性腫瘍患者などの免疫不全者において感染症を発症し、多剤耐性を示す重要な病原体として知られている。そのゲノム特性や質量分析(MALDI-TOF MS)による同定精度の検証は十分になされていなかった(C jeikeimは2024年12月29日時点でGenBankに23株のみ全ゲノムシークエンスデータが登録)。

本研究は、臨床検体から分離された菌株の正確な種同定と薬剤耐性遺伝子の関連を解明することを目的として実施された。
研究デザインは、国内1施設での6症例の臨床情報収集と、国内8施設から収集された菌血症由来33株の全ゲノム解析および薬剤感受性試験を組み合わせた後ろ向き解析である。
解析対象はMALDI-TOF MSでC. jeikeiumと判定された計39株であり、全ゲノム配列決定によるゲノム全体の遺伝的類似度を示す平均ヌクレオチド一致度(ANI)を用いて種を確定(FastANIによって95%以上の閾値でC. macclintockiae等の種を同定)させるとともに、CLSI M45-ED3ガイドラインに基づき微量液体希釈法で感受性を評価した。
薬剤耐性解析では、ResFinderによる自動検索に加え、既報のblaCoryne-A遺伝子の手動BLAST検索や、gyrAのQRDR領域におけるアミノ酸置換のSNP解析を組み合わせることで、表現型と遺伝型の整合性を詳細に検証した。
コアゲノムSNP解析による系統樹作成および、垂直伝播の評価精度を高める相同組換えの影響を除外した「組換え補正クローナル系統解析」が用いられた。

Key findings

MALDI-TOF MSでC. jeikeiumと同定された39株のうち、38株(97.4%)がゲノム解析により実際にはC. macclintockiaeであることが判明し、1株のみがC. evansiaeであった。
公開データベースを用いた全66株の解析でも51株(77.3%)がC. macclintockiaeと再同定され、実は本菌が臨床的に重要な種であることが示された。
薬剤感受性試験では、C. macclintockiaeの89.5%がblaCoryne-A遺伝子を保持しペニシリンに耐性を示したほか、シプロフロキサシンやエリスロマイシン、ST合剤に対しても高い耐性率を認めた。
一方で、すべての菌株がバンコマイシン、テシコプラニン、ダプトマイシン、リネゾリドに対して感受性を維持していた。
特にtet(W)遺伝子を持たない株(57.9%)は、ミノサイクリン(MIC90 16 µg/mL)を含むすべてのテトラサイクリン系薬に感受性であった。
また、同一施設内の菌株間でSNPの差が極めて小さいペアが確認され、院内伝播の可能性が示唆された。

Clinical perspective

本研究では、これまでC. jeikeiumとして一括りにされてきた臨床分離株の大部分が、実際には2023年に新種記載されたC. macclintockiaeであることが分かった。
多剤耐性C. jeikeiumによる侵襲性感染症の治療において、バンコマイシンの代替としてのテシコプラニンや、経口での治療を要する場合のミノサイクリンが、感受性試験に基づき有効な選択肢となり得ることが示された。本研究の単施設解析(6例)においても、4症例でミノサイクリンが使用されており、そのうち3例では経口へのoral step-down therapyとして使用されている。
本研究の制限事項として、臨床情報の詳細が1施設に限定されていることや、本菌の正確なクローナル伝播を定義するためのSNP閾値が未確立であることが挙げられている。本研究では同一患者から10ヶ月の間隔を置いて分離された菌株間のSNP差(1.04/genome/month)に基づき、1ヶ月あたり2 SNPという保守的な閾値を独自に設定している。
今後は、C. jeikeium complexに含まれる各ゲノム種間における自然生息域や感染経路、および臨床的特徴の差異を解明するためのさらなる症例蓄積が期待される。
Yamamuroらの報告では、C. jeikeium菌血症が血液悪性腫瘍患者でpredominantであることが示されているが、本研究結果を踏まえると、これらの多くがC. macclintockiaeであった可能性が高い。