Battipaglia G, Wehr C, Admiraal R, et al. Usage of rabbit anti-thymocyte / anti-T-lymphocyte globulins (ATG / ATLG) for hematological malignancies in allogeneic hematopoietic cell transplantation: Best practice recommendations from the EBMT Practice Harmonisation and Guidelines Committee. Bone Marrow Transplant. 2026;61(2):128-141. doi:10.1038/s41409-025-02742-8
Why this guideline matters
同種造血細胞移植におけるGvHD予防の標準的薬剤であるウサギ由来抗胸腺グロブリン(ATG)および抗Tリンパ球グロブリン(ATLG)は、製品選択や投与量、タイミングに関して施設間で大きな差が存在してきた。ATG (Thymoglobulin®)はヒトの胸腺細胞でウサギを免疫して得たを用いて製造されたもので、ATLG (Grafalon®)はヒトT細胞白血病由来の株化細胞であるJurkat細胞を用いて製造される。
本ガイドラインは、不適切な曝露による感染症リスクや生存率への悪影響を抑え、臨床的ベネフィットを最大化するための薬理学的根拠に基づいた個別化投与戦略を提示するために策定された。
Scope and Methodology
本ガイドラインは、造血器腫瘍に対して同種造血細胞移植を受ける成人および小児患者を対象としており、非腫瘍性疾患や馬由来製剤、アレムツズマブは対象外とされている。
欧州造血・細胞移植学会(EBMT)のガイドライン委員会が定めた手法に基づき、2024年にリールで開催された国際専門家ワークショップでの合議を経て策定された。
PubMed/MEDLINEおよびEMBASEを用いた包括的な文献レビューの結果と専門家の臨床的判断が統合されており、薬理学的特性から、診断・治療のフロー、副作用管理、未解決の課題までが広範囲に網羅されている。
Core Recommendations
血縁・非血縁者間移植において、特に末梢血移植片を用いる場合には、GvHD予防としてATGまたはATLGの併用が推奨されている。
製品間での直接比較データが不十分なため特定の製剤を優先する推奨はないが、ATGは2.5–5 mg/kg、ATLGは30 mg/kg(60 mg/kgより優先)が標準的な用量とされる。
実臨床のフローにおいて最も強調されているのは曝露量の個別化であり、特にATGでは体重、初回投与時の末梢血リンパ球数(ALC)、移植片ソースを考慮したモデルベースの投与設計が、移植後100日以内の早期CD4陽性T細胞回復(50/μL以上)を促進し、生存率の向上や非再発死亡(NRM)の低下に寄与することが示されている 。
一方、臍帯血移植における使用はグラフト由来T細胞の枯渇を招く恐れがあるため原則として推奨されず、使用する場合はモデルベースの慎重な調整が必要であると定義された。
ハプロ移植においては、後療法としてのシクロホスファミド(PTCy)との併用も検討されているが、大規模なレジストリ解析では生存への悪影響も報告されており、慎重な用量・タイミングの設定と今後のさらなる検証が求められている。
αβ T細胞除去移植においては、ドナーT細胞の輸注前に製剤が十分にクリアランスされていることが不可欠であり、Day -12から-9といった早期の投与タイミングが重要であるとされている。
Clinical perspective
本ガイドラインの導入により、従来の体重のみに基づく固定用量(mg/kg)から、ALCなどの生理的指標を加味した精密な個別化投与へのプラクティスの変化が期待される。
特に、GvHDの抑制と免疫再構築の維持という相反する課題を解決するために、ALCに基づく投与設計は専門領域における重要な診療根拠となる。
今後の課題としては、ATLGにおける個別化投与モデルのバリデーションや、異なる製剤間での薬物測定アッセイの標準化、さらにはPTCy併用療法下での最適なATG用量の決定が挙げられる。
また、複数の移植プラットフォームにおける実臨床データの蓄積とともに、モデルベース投与の導入に伴うコスト対効果や実施可能性についての検証も必要であるとされている。
現状では製品の入手可能性や各施設の慣例が選択に影響を与えているが、今後はエビデンスに基づいた最適な製剤選択と投与設計の標準化が求められている。


