ヒトに感染症が成立するためには、「病原微生物(Agent)」、「患者背景(Host)」、「環境(Environment)」という三つの要素が必要とされます。
米国疾病予防管理センター(CDC)の “Principles of Epidemiology in Public Health Practice” では、これら感染症発症に必要な三要素を “Epidemiologic Triad” として扱っており、感染症を構造的に理解するうえで極めて有用な推論のフレームワークです。

一方で、「感染臓器」、「病原微生物」、「患者背景」という三つの要素を用いて感染症を捉える考え方も広く用いられており、一般診療においてはいずれのモデルも実践的で有用かと思います。
しかし後述するように、免疫不全患者の感染症診療では宿主免疫状態や環境要因を中心に推論を行なっていくため、Epidemiologic Triad を用いた方が適している場面が多くなります。
そのため、本稿では感染症発症モデルとして Epidemiologic Triad を用いて解説します。
私は、レジデントやフェローの先生方に感染症の評価を求める際、まずこの3つの要素について情報を収集し、それを整理したうえでプレゼンテーションするよう指導しています。
当初はこの評価手法に戸惑うこともありますが、次第に慣れてくると感染症診療を非常に効率よく進められるようになり、最終的には誰もが論理的で整ったプレゼンテーションを行えるようになります。
これら三つの要素は互いに独立して存在するものではなく、相互に関連し合っています。
それぞれを丁寧に評価し、その関係性を意識して統合することで、診断から治療方針決定までを最短距離で導くことが可能になります。

しかし、実臨床では診断、判断は十分な情報がないまま暫定的に行われなければならない場面も多く、不確実性を伴うことも少なくありません。
トライアンドエラーを繰り返しながら、診療を進めていく中で、これら三つの要素を十分評価・整理しておくことで次の判断に繋がります。
この考え方は、免疫不全の有無を問わず、すべての感染症診療に共通して適用できる基本的な枠組みです。ぜひ臨床の中で意識的に用い、確実に身につけてください。
では、この三つの要素がそれぞれどのようなことを意味するのかについて解説をします。

