B細胞リンパ腫におけるCAR T療法と二重特異性抗体療法の感染リスク比較:系統的レビューおよびメタ解析

CAR T療法と二重特異性抗体療法の感染リスクを比較した系統的レビュー Recent Papers

van Besien H, Easwar N, Demetres M, et al. Comparative infection risk in CAR T vs bispecific antibodies in B-cell lymphoma: a systematic review and meta-analysis. Blood Adv. 2025;9(23):6063-6075. doi:10.1182/bloodadvances.2025016291

Study overview

CD19標的CAR T療法とCD3xCD20二重特異性抗体(BsAb)療法は、再発・難治性B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療戦略を大きく変えた。それぞれに特徴があり、直近のメタ解析ではCAR-T細胞療法はBsAbと比較し治療反応性、無増悪生存期間の延長が示唆された(https://doi.org/10.1182/blood.2023023419)一方、サイトカイン放出症候群や神経毒性の頻度が明確に高い。しかし、CAR-T細胞療法は入れ切りの製剤であり、多くの副作用の発現は投与初期に限定され、長期的には遷延する血球減少やB細胞形成不全に伴う低ガンマグロブリン血症に起因する感染症が、主要な非再発死亡原因とるが、一部のBsAbのように病勢進行まで投与を継続する「継続投与型」ではそのプロファイルが異なる可能性がある。
両療法の感染リスクを直接比較した臨床試験が存在しないという背景から、市販承認済みの製剤を用いた25件の前方視的臨床試験(計3202例)を対象に、全グレードの感染、グレード3以上の感染、および感染関連死亡率を比較する系統的レビューおよびメタ解析が実施された。
対象疾患は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)等のB-NHLであり、解析手法として、感染割合に加え、投与期間や追跡期間の違いを調整するために患者・月(patient-month)あたりの発生率を用いたランダム効果モデルによる統合解析が行われた。

Key findings

単純な感染割合による比較では、全グレード(CAR T 0.44 vs BsAb 0.54、P=0.18)およびグレード3以上(0.16 vs 0.22、P=0.08)のいずれも、両群間で統計学的な有意差は認められなかった。
しかし、追跡期間を考慮した患者・月あたりの解析においては、BsAb群が全グレード(0.0397 vs 0.0167、P=0.0012)およびグレード3以上の感染(0.0165 vs 0.0069、P=0.0003)の双方で有意に高い発生率を示した。
特に、エプコリタマブやオドロネキスタマブのように病勢進行まで投与を継続する「継続投与型」のBsAbは、モスネツズマブやグロフィタマブのような「固定期間投与型」およびCAR Tと比較して、有意に高いグレード3以上の感染発生率を認めた。
なお、感染関連死亡率については、患者単位(0.04 vs 0.03、P=0.26)および患者・月あたり(0.0023 vs 0.0022、P=0.96)のいずれの指標においても両群間に有意差はなかった。

Clinical perspective

本研究の新規性は、初期毒性が注目されがちなCAR T療法に対し、BsAb療法では特に継続投与が行われる場合に、時間経過とともに重症感染症の累積リスクが増大し、長期的な負担がCAR Tを凌駕する可能性を定量化した点にある。
NCCNガイドラインにおいても、再発・難治性のFL、DLBCL、MCLに対し、これら複数の免疫療法が推奨されているが、臨床家は製剤ごとの投与期間とそれに伴う感染リスクの蓄積を考慮した薬剤選択を行う必要がある。
本解析の限界として、臨床試験間での感染症報告基準の不一致や、COVID-19パンデミックによる死亡率への影響(CAR T関連死の40.8%、BsAb関連死の57.4%がCOVID-19関連)が挙げられる。
今後の展望として、BsAb療法の感染リスクを低減するための固定期間投与の最適化や、免疫グロブリン補充および成長因子製剤を組み込んだより積極的な感染予防戦略の確立に向けた、実臨床データに基づく検証が期待される。