芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)に対する新規CD123標的抗体薬物複合体Pivekimab Sunirineの有効性と安全性:第I/II相試験(CADENZA)

Pemmaraju N, Marconi G, Montesinos P, et al. Pivekimab Sunirine in Blastic Plasmacytoid Dendritic Cell Neoplasm. J Clin Oncol. Published online February 11, 2026. doi:10.1200/JCO-25-02083

Why this paper matters

BPDCNは極めて予後不良な血液悪性腫瘍であり、特に高齢者や合併症を有する症例では、唯一の根治治療である造血幹細胞移植への移行が困難である。
本研究は、既存薬とは異なる作用機序を持つ新たな標的療法が、高い奏効率と良好な忍容性をもって移植への橋渡し治療となり得ることを示している。

Study overview

BPDCNの発症年齢中央値は65歳と高く、高強度化学療法や同種移植不適の患者が多い一方で、同種移植のみが治癒可能性のある治療である事から高齢・合併症のある患者層における治療は限られる。
BPDCNはインターロイキン-3受容体-αであるCD123が全例で高発現しており、米国FDAが承認している抗CD123抗体であるTagraxofuspは21日サイクルの1~5日目に12mg/kgを投与する主要試験において、BPDCNの一次治療患者(n=29、中央値年齢67歳)の72%がCRまたはCRcを達成し、90%が部分奏効以上の反応を示した。同薬剤の最も重要な副作用は毛細血管漏出症候群(CLS)であり、長期追跡患者群の21%に発生しており、やはり高齢・合併症のある患者層には使用しにくい。
そこで、高親和性CD123抗体とDNAアルキル化剤を結合させた新規抗体薬物複合体Pivekimab Sunirine(PVEK)の有用性を検証するため、多施設共同非ランダム化第I/II相試験(CADENZA)が実施された。
対象は未治療(de novoおよび既往・併存血液腫瘍あり)または再発・難治性のBPDCN成人患者84名であり、主要評価項目はde novo未治療集団(PAP)における複合完全奏効(CCR:完全寛解+臨床的完全寛解(軽微な残留皮膚異常(minimal residual skin abnormality)」が認められる状態))率に設定された。介入としてPVEK 0.045 mg/kgを3週ごとに投与し、統計学的にはPAPで10%、再発・難治性集団で5%の参照値を上回るかどうかを評価した。

Key findings

PAP(20名)におけるCCR率は75%(95%CI:51-91%)であり、全奏効率は80%、生存期間中央値(OS)は16.6カ月であった。
CCR達成者の53%(8/15名)が造血幹細胞移植(SCT)へと移行した。
再発・難治性集団(51名)では、CCR率14%(95%CI:6-26%)、OS 5.8カ月であり、Tagraxofusp既治療例においても臨床的に意味のある反応が得られた。
PAPの複合完全奏効(CCR)を達成した患者15名のうち、53%(8/15名)がSCTに移行し、全身治療集団でCCRを達成した23名のうち、52%(12/23名)がSCTに移行した。
PVEKの最終投与から移植までの期間中央値は、未治療例で46日、再発・難治例で52日であった。
安全性に関しては、末梢性浮腫(54%)、倦怠感(26%)、輸注反応(26%)が主な有害事象であり、グレード3以上の好中球減少は16%、血小板減少は14%に認められた。
治療期間中の静脈閉塞性疾患(VOD)は2例で報告されたが、CLSの発現は認められなかった。

Clinical perspective

薬剤投与頻度が低く、外来通院で投与可能な3週に1回の短時間輸注製剤が、移植不適応と判断されがちな高齢BPDCN患者において、高い奏効率を維持しつつ移植への橋渡しが出来たのは非常に良い結果である。本試験のPAPにおける中央値は74歳(最高84歳)、85%が65歳以上である事から、このような高齢層においてPVEKは本来なら移植不適応と判断されるような患者を移植へと繋げることを可能にしている。
TagraxofuspはCD123を標的とした細胞毒性製剤だが、その毒性部分はジフテリア毒素を利用しており、標的であるCD123の発現が失われること(抗原喪失)ではなく、細胞内におけるジフテリア毒素の作用経路の欠損や、毒素自体への不感受性が原因となり耐性を惹起する。
PVEKは、抗CD123抗体にインドリノベンゾジアゼピン・シュードダイマー(IGN)ペイロードを結合させた抗体薬物複合体(ADC)で、DNAをアルキル化し、一重鎖DNA切断を引き起こし効果を発揮する。ジフテリア毒素の作用経路に依存しないため、Tagraxofuspに対して耐性を獲得したBPDCN細胞に対しても、強力な抗腫瘍効果を発揮することが可能となる。
本研究(CADENZA試験)では57%(29名)がすでにTAGによる治療を受けており、TAG治療後に再発・難治化した非常に治療が困難な集団において、PVEKは「臨床的に意味のある」効果と生存期間をもたらした。
また、Tagraxofuspと比較して、入院管理を要するCLSのリスクが極めて低いことは臨床上の利点となる。
一方で、PAPの症例数が20名と限定的であることや、移植後のVODリスク管理が依然として重要である点は留意すべき課題である。
現在は急性骨髄性白血病(AML)に対する併用療法の開発も進行しており、今後は長期予後の検証とともに、CD123陽性の他疾患への適応拡大が期待される。